にきび(ざ瘡)
にきび(尋常性ざ瘡)とは?
にきびは毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、炎症が起きる皮膚の病気です。
医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれます。
日本人の約90%が思春期に経験するとされ、最も一般的な皮膚疾患のひとつです。
しかし、単なる思春期の一過性の問題として軽視されがちです。
実際には、にきびは心身の健康に大きな影響を与える疾患です。
見た目の悩みから自己評価の低下につながり、不登校や対人関係の困難にも発展することがあります。
特に中学生・高校生にとっては、自分の見た目に対する意識が高まる時期。
顔に赤いにきびが目立つことで、外出や会話を避けたり、自信をなくすケースも少なくありません。
なぜできる?にきびの主な原因
にきびの発症にはさまざまな要因が関係しますが、中心となるのは以下の4つです。
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皮脂の分泌が増える
思春期になると男性ホルモン(アンドロゲン)が活発になります。
これにより皮脂腺が刺激され、皮脂が過剰に分泌されるようになります。 -
毛穴の出口が詰まる
毛穴の出口には「毛包漏斗部(もうほうろうとぶ)」と呼ばれる部分があり、
この部分で角質がはがれずにたまりやすくなると毛穴が詰まってしまいます。 -
アクネ菌の増殖
詰まった毛穴は空気に触れにくい環境になり、
そこに皮脂を栄養とするアクネ菌(正式名称:Cutibacterium acnes)が増殖します。 -
炎症が起きる
アクネ菌がつくり出す物質や、体の免疫反応によって炎症が起き、
赤みや腫れをともなうにきびになります。
にきびの症状はどう進む?
それぞれの段階ごとの症状変化
にきびは、症状の進行段階によって形や色が異なります。
非炎症性皮疹(コメド)
白ニキビ(閉鎖面皰)
毛穴が皮膚に覆われた状態。ぷつぷつと白っぽく見えます。
黒ニキビ(開放面皰)
毛穴が開いている状態。中の皮脂が酸化して、黒く見えてきます。
炎症性皮疹
紅色丘疹(赤ニキビ)
赤く盛り上がった状態で、触ると痛みを伴います。r_right
膿疱(黄ニキビ)
白い膿をもつにきびで、炎症が強くなった状態です。
ざ瘡瘢痕
炎症が治った後には、赤みや色素沈着、
あるいは皮膚のくぼみ(萎縮性瘢痕)などの跡が残ることもあります。
診断|重症度と受診のタイミング
皮膚科では、にきびの「数」と「種類」で重症度を判断します。
顔の片側にある炎症性皮疹の数による分類(参考基準)

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軽症:5個以下
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中等症:6~20個
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重症:21~50個
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最重症:51個以上
さらに、胸や背中など広範囲に及ぶ場合や、瘢痕(はんこん=跡)ができやすい方、精神的ストレスが強い場合も重症と判断し、早期治療が望まれます。
治療|外用薬・内服薬・美容的アプローチ
にきび治療としては、以下のような外用薬を組み合わせ、抗生物質の飲み薬なども併用することが行われます。
赤いぶつぶつしたにきびや膿をもったにきびがあれば、いくつかの治療を組み合わせたり、あらかじめ2種類の薬を混ぜた配合薬を使ったりして積極的に治療します。
赤いぶつぶつしたにきびが良くなった後は、抗生物質の飲み薬や塗り薬を中止して、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどでの再発予防(維持療法)をする方法が、標準的です。
また、毛穴にたまっている皮脂を針で穴をあけて押し出す面皰圧出という処置も行っています。
外用薬(塗り薬)
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過酸化ベンゾイル(BPO):角質をはがす作用があり、アクネ菌にも有効です。初期段階に効果的。
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アダパレン:毛穴の詰まりを改善するビタミンA誘導体。
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抗菌薬(クリンダマイシンなど):炎症性にきびに使用されます。
内服薬
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中等症以上の炎症には抗生物質(テトラサイクリン系)を一定期間服用します。
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女性では、低用量ピルや漢方薬(清上防風湯など)を使うこともあります。
美容皮膚科での対応(保険外)
にきび跡や色素沈着に対する美容的なケアとして以下のような治療が行われています。
これらの中で選択肢の一つとして推奨されている治療はケミカルピーリングのみで、
そのほかの治療は日本における効果や安全性が十分に確認できていないため、
日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨されておらず、当院ではフラクショナルレーザーやIPLは行っておりません。
ケミカルピーリングについては自費診療として行っておりますので、美容皮膚科のページを参照ください。
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ケミカルピーリング
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フラクショナルレーザー
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光治療(IPL)
にきびのスキンケア|間違ったケアが悪化のもとに
にきび治療ではスキンケアの見直しが欠かせません。
正しい洗顔法のポイント
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朝と夜の1日2回が基本です。
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洗顔料はしっかり泡立てて、手と顔が直接触れないよう泡でなでるように洗います。
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すすぎ残しのないように、ぬるま湯でしっかり流しましょう。
保湿は肌質を見極めて
乾燥肌の人は保湿が必要ですが、脂性肌で刺激に弱い場合は保湿がかえって悪化の原因になることもあります。
「ノンコメドジェニック(毛穴が詰まりにくい)」表示の製品がおすすめです。
日焼け止めも忘れずに
紫外線は色素沈着や跡を悪化させる原因になります。
「敏感肌用」「にきび肌用」などの低刺激タイプの日焼け止めを選びましょう。
生活習慣とにきび|体の内側からも整えよう
にきびは肌だけでなく、体の中のコンディションも反映しています。
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食事:油分や糖分の多い食事は皮脂を増やす原因になります。
和食中心で野菜・果物・発酵食品など、腸内環境を整える食事が推奨されます。 -
睡眠:夜更かしはホルモンバランスを乱し、皮脂分泌を増加させます。
毎日同じ時間に寝る・起きる習慣をつけることが大切です。 -
ストレス管理:にきびとストレスには深い関係があります。
趣味や運動、リラックスタイムを取り入れましょう。
にきびのお悩みQ&A
Q. 日常生活で注意することは?食事との関係は?
A.ストレスの少ない規則正しい生活が重要です。
チョコレートやケーキ、ピーナッツなどの食べ物とにきびの因果関係は明確でなく、とくに食事に関する制限はありません。
にきびを潰したり、触ったりしているとよくなりません。にきびを触らないようにしましょう。また、にきびを刺激しないような髪型を工夫してください。保湿も重要です。
Q. にきびはつぶしてもいいの?
A. 基本的にはおすすめできません。
跡が残るリスクが高く、炎症も悪化します。
医師による面皰圧出は安全に行える処置ですが、自己判断で行うのは避けましょう。
Q. 不潔だがからできるの?洗顔は回数が多い方がいい?
A. 不潔にしているからできるわけではありません。
余分な皮脂や汚れを落とす洗顔は必要ですが、洗いすぎると必要な皮脂まで落ちてバリア機能が壊れます。
1日2回が適切です。乾燥気味の方は保湿剤も使用してください。
Q. お化粧は?
A.にきびがあっても化粧(メイクアップ)をしてもかまいません。
しかし、赤いにきびを隠すために、ファンデーションやコンシーラーを塗り重ねることはお勧めできません。
帰宅したらクレンジングをしてきちんと化粧を落としてください
Q. 大人のにきびと思春期のにきびの違いは?
A. 思春期は皮脂過剰が主因ですが、大人のにきびは乾燥やホルモンバランス、ストレスが関与することが多く、
フェイスラインやあご周辺に出やすいのが特徴です。
まとめ|早めのケアで未来の肌を守る
にきびは「よくあること」と思われがちですが、
放っておくと跡が残ったり、心の傷になることもあります。
適切な治療とスキンケア、生活習慣の見直しを行うことで、
健康で美しい肌を取り戻すことができます。
「まだ皮膚科に行くほどじゃないかも…」と感じている方も、
まずは一度、ご相談ください。
皮膚科は“にきびを治す場所”であり、あなたの悩みに寄り添う場所でもあります。
参考文献
- 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 2018.
- 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 2012.
- 天野宏敏ほか:医学検査. 2019.
- 小松貴義, 大塚篤司.思春期のにきびケア、どうするのが正しい?チャイルドヘルス 2020.
- 畑三恵子, 星野雄一郎.尋常性ざ瘡.小児内科 2022.
- 林伸和.にきび患者のスキンケア.薬局 2022.
- 中村健一.ティーンズ女子のにきびをはじめとしたスキントラブル.JIM 2013.
