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日焼けと皮膚傷害|紫外線から肌を守る正しいUVケアで老化予防

日光と皮膚障害について

紫外線の種類と特徴

紫外線は地表に届く太陽光の中でも見えない光の一種です。
そのうちUVCはオゾン層でほぼ吸収され、問題となる紫外線は波長の長いUVAと短いUVBに分かれます。
UVAは肌の奥深く、真皮にまで到達し、コラーゲンやエラスチンを破壊して
しわやたるみを引き起こす「光老化」の大きな要因です。

UVBは主に表皮に作用し、赤くヒリヒリする日焼け(サンバーン)やDNA損傷をもたらします。
これが長期的には皮膚がんの原因にもなるため、特に注意が必要です。

さらに紫外線は季節や時間帯によって量が変化し、日本では5月〜8月にかけてピークになります。
曇りの日でも紫外線の約7割が届くため、油断は禁物です。

紫外線が皮膚に与える影響

紫外線は皮膚に大きな負担を与えます。
UVAによって真皮内の弾性繊維が切れてしまうと、肌に深いしわやたるみが生まれます。
一方UVBは細胞の核に直接ダメージを与え、遺伝子に変異を起こします。
これらの積み重ねで皮膚がんが起こりやすくなるのです。

紫外線は肌の乾燥も悪化させます。
皮膚の一番外側にある「角層」の水分を奪い、バリア機能を低下させます。
バリアが弱ると、細菌やアレルゲンが侵入しやすくなり、湿疹やかゆみを誘発します。
そのため紫外線対策は美容だけでなく皮膚の健康維持に欠かせないのです。


日焼け予防の重要性

シワやたるみを防ぐ

紫外線による光老化は、自然な老化に比べて皮膚の老化を何倍も早めます。
若い頃から対策を怠ると、30代でも深いしわやくすみが目立ちやすくなります。
紫外線で壊れたコラーゲンは元には戻りにくく、早期の予防こそが最善策です。

また、光老化は肌のハリを失わせるだけでなく、毛穴のたるみや化粧ノリの悪さといった日常的な肌悩みにも直結します。
「老け顔予防」は単に美容だけではなく、健やかに年を重ねるうえで大切な生活習慣です。

皮膚がん予防の観点から

紫外線は皮膚がんの最大の原因のひとつです。
紫外線を浴びるとDNAに傷が入り、これを修復する力が追いつかないとがん細胞が発生してしまいます。
とくに子どものうちに強い日焼けを繰り返すと、将来の皮膚がんリスクが格段に高まることが分かっています。

皮膚がんにはいくつか種類があります。
・基底細胞がん(比較的進行が遅いが再発しやすい)
・有棘細胞がん(転移しやすい)
・悪性黒色腫(メラノーマ。進行が早く命に関わる)
などが代表的です。

大人だけでなく、子どもにも紫外線ケアが必要といわれる理由はここにあります。
たかが日焼け、と甘く見ないでいただきたいです。


日常生活での紫外線対策

外出時の工夫

紫外線が強い時間帯をなるべく避け、  
出る場合はつばの広い帽子やサングラス、長袖でしっかり防御をしましょう。
首の後ろも意外と焼けやすいので、ストールなどで覆うのも効果的です。

近年では通気性の良いUVカットパーカーやアームカバーなど、
便利な紫外線対策グッズも増えています。
汗をかいた後の拭き取りや保湿もセットで意識すると
皮膚のバリア機能を守りやすくなります。

屋内での紫外線対策

屋内でも紫外線は届きます。UVAは窓ガラスを通り抜ける性質があるため、屋内でも光が当たり続ける場合は対策が必要です。
片側から光が当たり続けたトラックドライバーの有名な写真みていただければわかりやすいかと思います。
窓にUVカットフィルムを貼ったり、日差しの強い時間帯はレースカーテンを閉めたりして工夫しましょう。

季節ごとの紫外線ケア

夏だけでなく、春先や秋も意外と紫外線量が多いです。
春はまだ肌が慣れておらず、急に紫外線に当たることで日焼けしやすい時期。
秋も「もう涼しいから大丈夫」と油断しがちですが、紫外線量は高めなので注意が必要です。
一年を通して「紫外線はゼロにならない」と心得ることが大切です。

サンスクリーン剤の選び方と使い方

 

 

紫外線防止成分の種類

日焼け止めは、大きく「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2種類に分けられます。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収し熱に変えて放出するはたらきがあります。
肌にぴったり密着して防御力が高い一方で、刺激を感じやすい人もいます。

一方、紫外線散乱剤は肌の表面で紫外線を反射してはね返すタイプです。
酸化亜鉛や酸化チタンなどの成分が代表的で、
「ノンケミカル」や「紫外線吸収剤フリー」と表示されることが多いです。
敏感肌や赤ちゃんにはこちらが推奨されます。

最近では吸収剤と散乱剤をバランスよく配合したハイブリッド型も増えており、
塗り心地や白浮きのしにくさを改善した商品も多く出ています。

SPFとPAの見方

日焼け止めには「SPF」と「PA」の表示があります。
SPFはUVBの防御効果を示す指標で、たとえばSPF30なら「日焼けまでの時間を30倍遅らせる」という意味です。

PAはUVAを防ぐ目安で、PA+からPA++++までの4段階で表示されます。
+が多いほどUVAに対して防御力が高いことを示しています。

なお、数値が高いからといって1日中無敵というわけではありません。
汗や皮脂、こすれなどで落ちてしまうので、数時間おきに必ず塗り直すことが大切です。

適切な塗り方・塗り直し

多くの方が日焼け止めを「少なめに」塗ってしまいがちです。
説明にある「適量」は顔ならパール粒2個分程度、腕など広い部位は500円玉2枚分くらいを目安に使ってください。

塗りむらをなくすため、いったん薄くのばしてから
もう一度重ねる「二度塗り」がおすすめです。
レジャーやプールなど水に触れるシーンではウォータープルーフを選び、さらに2〜3時間おきに塗り直すことで効果をキープできます。

よくある誤解と正しい知識

「日焼け止めを塗れば絶対焼けない」というのは大きな誤解です。
あくまで紫外線を減らす手段の一つであり、
帽子や衣服での物理的な防御もあわせるのが大切です。

また、室内や曇りの日でも紫外線は届いています。
日常生活でも必ず日焼け止めを使う習慣をつけましょう。
そして落とすときは石けんや洗浄剤でやさしく洗い流し、
肌への刺激を最小限にしましょう。


こどもの紫外線対策

子どもの肌の特徴

子どもの皮膚はとても薄く、大人より水分を保持する力も弱いです。
また、角層が未熟でバリア機能が整っていないため、紫外線による刺激にとても敏感です。

さらに子どもは外で遊ぶ時間が長く、強い日差しを浴びるリスクが大人より高いと言えます。
このため子どもの紫外線対策は特に重要です。

近年、将来の皮膚がんリスクは幼少期の強い日焼け歴に大きく関係していることが分かっています。
紫外線から子どもの肌を守ることは、その子の将来の健康への投資でもあるのです。

年齢別の対策ポイント

赤ちゃん(0歳〜1歳ごろ)は
帽子やベビーカーの日よけをしっかり活用し、直射日光をなるべく避けましょう。
まだ日焼け止めを使うよりも物理的な防御が基本です。

1歳を過ぎて歩けるようになったら、
紫外線散乱剤ベースの低刺激な日焼け止めを少量ずつ使い始めることを検討してもかまいません。
ただし肌荒れが出たときはすぐに中止し、医師に相談しましょう。

小学生以上になれば、自分でも塗り直せるよう「2〜3時間ごとに塗り直す」習慣を伝えてください。
長袖シャツやつばの広い帽子を組み合わせ、外遊びのルールとして日陰で休む時間をとるなどの声かけも大切です。

保護者ができるサポート

子どもは紫外線の怖さを理解しにくいので、大人が繰り返し説明してあげる必要があります。
「長く日差しに当たると赤く痛くなるよ」「おとなになったときの病気を減らせるんだよ」など、
年齢に合わせて優しく教えるとよいでしょう。
(実際は難しいですが・・・)

また、子ども用のUVカット素材の服や帽子を選んだり、学校や園と協力して紫外線対策の教育を進めることも大事です。
プール授業や屋外活動のときも保護者がチェックし、日焼け止めを持参させるなどの工夫で紫外線から守れます。


日焼け

日焼けの仕組みと段階

日焼けは、医学的には「日光皮膚炎」といわれる皮膚のやけどです。
紫外線B波(UVB)が表皮の細胞にダメージを与え、
皮膚が赤くヒリヒリしたり、水ぶくれができる状態を指します。

日焼けは大きく2段階に分けて考えられます。
まず「サンバーン」と呼ばれる急性の炎症です。
日光に当たった数時間後に赤くなり、痛みや腫れをともなう症状です。
ひどい場合は水ぶくれや熱感が強く、日常生活に支障が出ることもあります。

その後に起こるのが「サンタン」と呼ばれる色素沈着です。
これは皮膚が紫外線に対して防御しようと、メラニンという茶色い色素を増やすことで黒くなる反応です。
一度増えたメラニンはすぐには消えにくく、シミの原因になります。

応急処置と回復のケア

日焼けをしてしまったときは、まず「冷やす」ことが第一です。
冷水や保冷剤をタオルで包んで、赤くなった部分をやさしく冷やしましょう。
水ぶくれができている場合は決してつぶさず、清潔に保ちつつ早めに皮膚科を受診してください。

軽い日焼けであれば保湿ケアも重要です。
ヒリヒリした肌は乾燥しやすく、さらに刺激に弱くなっています。
アルコールを含まない保湿剤でうるおいを補い、強いかゆみや痛みが続く場合はステロイド外用薬の処方を検討します。

回復の間は無理に日焼けした皮膚をこすったり、刺激の強い入浴やマッサージを避けることが大切です。
紫外線をさらに浴びると治りが遅くなるため、日焼けから数日間は特に紫外線防御を徹底しましょう。


日光角化症

どんな病気か

「日光角化症(にっこうかくかしょう)」とは、
長年にわたって紫外線を浴び続けた部分にできる、赤くザラザラした小さな斑点のような病変のことです。
高齢の方や、屋外での仕事が多い方に多くみられます。

一見シミのように見えますが、実際には「前がん病変」といわれ、
そのままにすると有棘細胞がんという皮膚がんに進行する恐れがあります。
日光角化症は日本でも年々増加しており、早期発見・早期治療がとても大切です。

早期発見と治療の流れ

日光角化症は、指で触るとザラつきを感じるのが特徴です。
色は赤みがかったり、茶色くなったり個人差があります。
もし「治りにくい赤いしみ」があれば皮膚科に相談してください。

治療としては液体窒素での凍結療法が多く使われます。
これはマイナス196度の液体窒素を病変に当てて異常な細胞を壊す方法で、痛みはありますが数分で終わります。
塗り薬(5-FUやイミキモド)を併用することもあります。

治療後も同じ場所に再発したり、新しい日光角化症ができることがあるので、
定期的に皮膚科での経過観察を続けることが大切です。

再発予防と経過観察

一度日光角化症ができるということは、すでに紫外線ダメージが強く蓄積しているサインです。
「治療したから終わり」ではなく、今後の紫外線対策をより一層見直す必要があります。

紫外線防止効果の高い日焼け止めや、長袖・帽子・サングラスといった物理的防御を欠かさずに。
また春先や秋にも紫外線が強いので、1年中気を抜かない意識が大切です。


光過敏症

光過敏症とは

「光過敏症(ひかりかびんしょう)」とは、通常の紫外線量でも皮膚に赤みやかゆみ、水ぶくれなど
過剰な反応が出てしまう病気です。

光過敏症には、
・生まれつきの遺伝体質によるもの(内因性)
・薬や化粧品などが原因となるもの(外因性)
の2つがあります。

内因性としては、色素性乾皮症などが代表的です。
この病気ではDNA修復機能が弱く、わずかな紫外線でも深刻なダメージが起こります。

外因性では抗菌薬や利尿薬、あるいは市販の外用薬の成分などが
紫外線に反応して皮膚炎を引き起こすことがあります。
「光アレルギー性皮膚炎」や「光毒性皮膚炎」と呼ばれるものです。

外因性・内因性の違い

外因性の光過敏症は、薬や化粧品をやめれば改善できることが多いですが、
内因性の場合は根本的に体質が関係しているため、一生紫外線に注意して暮らす必要があります。

いずれの場合も、皮膚に異常な赤みやかゆみが出たときには
自己判断せずに皮膚科を受診し、原因の薬や生活習慣について詳しく相談してください。

生活上の注意点と医療機関での相談

光過敏症は周囲に理解されにくい病気ですが、再発を防ぐには周囲の協力と、こまめな紫外線対策が欠かせません。
学校や職場でも自分の病気を伝えておき、UVカットフィルムの使用や服装の配慮をしてもらうのも一つの方法です。

また、皮膚科では光テストといってどの波長の紫外線に反応しやすいかを調べることもあります(当院では行っておりません)。
適切な診断とケアを受けながら、安心して日常生活を送れるよう専門医と連携しましょう。


まとめと皮膚科専門医からのメッセージ

紫外線は、美容面だけでなく健康面においても大きな影響をもたらす存在です。
シワやシミといった加齢変化を早めるだけでなく、皮膚がんの発症リスクを上げる要因でもあります。

とくに子ども時代の強い日焼けは将来の病気の原因になります。
そのため、赤ちゃんのころからの紫外線対策は家族ぐるみで取り組むべき大切な習慣です。

日焼け止めの正しい使い方や、帽子・衣服での防御、日陰を活用するなどの対策を日々の生活に組み込みましょう。
そして気になるシミやしこりがあれば、すぐに皮膚科に相談してください。

紫外線に負けない、健康で美しい肌を守るための知識として
ご活用いただければ幸いです。

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