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大人の肌トラブル 年齢別に知る皮膚トラブルとスキンケア

皮膚は私たちの体を守る大切なバリアです。外からの刺激や細菌の侵入を防ぎ、体内の水分が失われないようにする役割があります。
また、温度調節をしたり、触った感覚を感じたりする働きも持っています。

大人の皮膚はバリア機能としては完成されます。
しかし、年を重ねるにつき、環境や加齢の影響が積み重なり、いろいろな病気やトラブルが起こってきます。

肌の老化は避けることのできない自然な現象ですが、若いうちから加齢を意識したスキンケアをすることで、
肌を健康に保ちいろいろな病気を予防し、美しく年を重ねることができます。

ここではまず基本的なスキンケアを紹介し、各世代でよくある皮膚トラブルとその原因について紹介します。
それぞれの病気の詳しい解説については、リンク先のページも参照してください。

健康で若々しい肌を維持するためのスキンケア

肌の老化

肌の老化は大きく分けて「内因性老化」と「外因性老化」の二つの要因によって進行します。

  • 内因性老化:加齢に伴い自然に起こる変化です。
    皮膚
    が薄くなったり、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)が遅くなったり、皮脂の分泌が低下したりします。
    加齢とともにコラーゲンやエラスチンが減少し、肌のハリや弾力が低下します。
    また、皮脂やセラミドの分泌量が減り、肌が乾燥しやすくなることで、シワやかゆみなどのトラブルを引き起こします。
  • 外因性老化:紫外線や大気汚染、生活習慣の乱れが原因となるものです。
    特に紫外線は、肌の奥深くまでダメージを与え、コラーゲンを分解することでシワやたるみの原因となります。
    また、紫外線を浴び続けることでメラニンが過剰に生成され、シミやくすみができやすくなります。

老化は誰にでも起こる自然な現象ですが、日々の適切なスキンケアで、そのスピードを緩やかにすることができます。
保湿で肌のバリア機能を維持し、乾燥によるトラブルを防ぐこと、紫外線対策で紫外線ダメージを軽減することが老化予防につながります。

洗顔

刺激性の低い洗顔料を使用し、熱いお湯は避け、ぬるま湯で優しく洗いましょう
洗いすぎは乾燥の原因となるため、朝晩2回程度にしましょう。

保湿

洗顔後や入浴後5分以内に保湿剤を塗り、肌の水分を補給しましょう。
保湿剤はセラミドヒアルロン酸など、保湿効果の高い成分が含まれたものを選ぶと良いでしょう。
乾燥が気になる部分には、クリームや軟膏を重ね塗りすると効果的です。

紫外線対策を強化

紫外線から肌を守ることがシミやたるみの予防につながります。日焼け止めと紫外線の物理的な遮断を行いましょう。

  • 日焼け止め:
    年間を通して使用し、SPF30以上の日焼け止めを毎日使用し、2〜3時間ごとに塗り直してください。
    顔面では、鼻背から鼻尖、頬骨部、耳が紫外線を浴びやすいので、重点的に塗りましょう。
    レジャー時など、水や汗で流れたり、拭き取りなどで除去されることを考慮して、2~3時間ごとにサンスクリーン剤を塗り直す必要があります。
    紫外線吸収剤フリーの製品を選ぶと、肌への負担を軽減できます。
  • 物理的な遮断:
    帽子や日傘などを活用し、直接的な紫外線を避けましょう。

抗酸化ケア成分を取り入れる

抗酸化剤(β-カロテン,ビタミンC,ビタミンE,コエンザイムQ10,ポリフェノールなど)の内服、
レチノールの外用、コラーゲンの生成を助ける成分をスキンケアに取り入れることで、ハリのある肌を維持しやすくなります。

食生活を見直す

抗酸化作用のあるビタミンCやE、コラーゲンを含む食品を積極的に摂ることで、肌の老化を遅らせることができます。
緑黄色野菜やナッツ、魚を積極的に摂ることで、体の内側から肌を守ります。
生活習慣病,いわゆるメタボはいろいろな病気の原因になります。痩せ過ぎもお肌を傷めます。
太りすぎず痩せすぎず適切な体重を意識することも大切です。

注意点

  • 乾燥肌、敏感肌の場合は、保湿剤最初から併用する方が無難です。
  • 新しい化粧品や薬剤を使用する際は、パッチテストを行い、アレルギー反応がないか確認しましょう。

20代からの肌の変化とトラブル

20代は肌がもっとも美しく見える時期ですが、同時に新たな肌トラブルが現れやすい年代でもあります。
思春期のニキビが落ち着く一方で、生活習慣の変化やストレスの影響を受けやすく、乾燥や敏感肌、くすみなどが気になることもあります。

ここでは20代でよく見られる肌の症状や原因、関連する病気、そしてスキンケアの方法についてご紹介します。

皮脂の分泌と毛穴の悩み

20代はホルモンバランスが安定してくる時期ですが、ストレスや食生活の乱れ、スキンケアの影響で皮脂が過剰に分泌されることがあります。
その結果、毛穴の開きや黒ずみ、さらには大人ニキビが発生しやすくなります。

にきび(尋常性ざ瘡)

20代になってもニキビに悩む方は少なくありません。ホルモンバランスの変化やストレス、食生活の乱れ、化粧品の影響などが原因となることが多いです。
特に、フェイスラインやあご周りにできる大人ニキビは、生活習慣を改善しないと繰り返しやすくなります。

肌の乾燥と敏感肌

乾燥性皮膚炎

加齢により皮脂の分泌が減少し、肌のバリア機能が低下することで乾燥が進み、かゆみや赤みを伴う湿疹が発生します。
無理なダイエットや洗顔のしすぎによって皮膚のバリア機能が低下し、乾燥や敏感肌になり発症することもあります。

かゆみ(じんましん・アトピー・接触性皮膚炎)

20代では、生活環境が大きく変わり、ストレスや環境の変化、アレル源への曝露の増加などで、
じんましんが出たり、
アトピー性皮膚炎が悪化したり、化粧品や衣類の素材による接触性皮膚炎も増加したりします。

接触性皮膚炎

化粧品や金属、植物などによる刺激やアレルギー反応で赤みやかゆみ、腫れが現れます。
思春期では、化粧品や染毛剤、アイメイク、アクセサリーの使用による接触性皮膚炎が増えます

アトピー性皮膚炎

生活面での変化で、生活の乱れやストレス、スキンケアがしなくなるなどで、バリア機能が低下するため、アトピーが大人になってからも悪化することがあります。
症状が持続する場合は、皮膚科での診断と治療を受けることをおすすめします。

じんま疹

ストレス、食べ物、寒暖差、アレルギーなどが原因で発症します。
突然のかゆみを伴う赤い発疹が現れます。数時間で消えることが多いですが、慢性化する場合もあります。
再発を防ぐためには、原因の特定と生活習慣の見直しが重要です。

巻き爪

ファッション性を重視したヒールや窮屈な靴を履くことで、巻き爪が起こりやすくなります。
巻き爪になると、爪が皮膚に食い込み、炎症や痛みを引き起こすことがあります。

性病による皮疹

20代は性的活動が活発な時期でもあり、性病による皮疹が発生することがあります。
梅毒やヘルペス、尖圭コンジローマなどが代表的で、陰部やその周辺に赤い発疹や水疱、しこりが見られることがあります。
ご相談しにくいこととは思いますが、専門医を受診することが重要です。

紫外線による影響

20代は、日焼け止めを怠ることが多く、紫外線によるダメージが蓄積される時期です。
紫外線はシミやくすみの原因となり、将来的にシワやたるみを引き起こす可能性があります。

20代のお肌でよくある質問(FAQ)

Q1. 20代でもニキビができるのはなぜですか?

A1. 20代のニキビは、ホルモンバランスの変化やストレス、食生活の乱れが主な原因です。特に、フェイスラインやあご周りにできやすく、生活習慣の改善が重要です。

Q2. 乾燥肌を防ぐためにできることは?

A2. 適切な保湿が大切です。洗顔後すぐに化粧水や乳液を使用し、水分を閉じ込めましょう。また、加湿器を活用して室内の湿度を保つのも効果的です。

Q3. 紫外線対策は夏だけで良いですか?

A3. いいえ、紫外線は年間を通じて降り注いでいるため、日焼け止めは一年中使うことをおすすめします。特に外出が多い方は、SPF30以上のものを選び、こまめに塗り直しましょう。

Q4. 巻き爪を予防する方法は?

A4. 窮屈な靴を避け、爪はまっすぐに切ることが大切です。また、爪の周りの皮膚を清潔に保ち、適度な保湿を心がけましょう。

Q5. 性病による皮疹を見つけたらどうすればいいですか?

A5. 陰部やその周辺に赤い発疹や水疱がある場合、早めに専門医を受診しましょう。早期発見・早期治療が重要です。

Q6. どんなときに皮膚科を受診すればいいですか?

A6. 自然に治らないニキビや湿疹、かゆみが長引く場合、自己流のスキンケアで改善しないとき、または急激に症状が悪化した場合には、皮膚科を受診するのが望ましいです。専門医による適切な治療を受けることで、早期回復が期待できます。

まとめ

20代の肌は健康的で美しい一方、ライフスタイルや環境の影響を受けやすい時期でもあります。
適切なスキンケアを行い、生活習慣を整えることで、トラブルを未然に防ぐことができます。万が一肌トラブルが長引く場合は、専門医に相談し、早めの対応を心がけましょう。


中高年から気になる肌の老化と肌トラブル

中高年になると、肌の老化がより顕著になり、さまざまなトラブルが現れやすくなります。
生活習慣やホルモンバランスの変化が肌に現れ、酒さや乾癬などが問題になってきます。
また、乾燥や色素沈着の進行、血流の低下によるくすみも悩みの種となります。
加齢に伴い、皮膚の再生能力が低下し、外部からの刺激に対する抵抗力も弱まりヘルペスや帯状疱疹)、白癬(水虫)など皮膚感染も問題になります。
全身の病気にかかることも増え、皮疹や、薬による薬疹なども問題になってきます。

シワ・たるみ

コラーゲンやエラスチンの減少により、肌のハリや弾力が低下します。これにより、目元や口元のシワ、フェイスラインのたるみが目立つようになります。

くすみと血行不良

新陳代謝の低下により、肌のターンオーバーが遅れ、古い角質が肌表面に残ります。これがくすみの原因となり、顔色がさえなく見えることがあります。

シミ・そばかすの増加

長年浴びた紫外線の影響が蓄積し、シミやそばかすが濃くなります。また、ホルモンバランスの変化も影響し、色素沈着が進みやすくなります。

老人性色素斑(シミ)

紫外線の影響でできる茶色いシミで、顔や手の甲に多く現れます。

赤ら顔(酒さ)

顔が慢性的に赤くなり、炎症や細かな血管の拡張が見られます。刺激や温度変化で悪化しやすいのが特徴です。

乾燥、肌荒れ、敏感肌、かぶれ

加齢により皮脂やセラミドの分泌が減少し、肌の水分保持力が低下します。その結果、乾燥しやすくなり、カサつきやかゆみを引き起こすことがあります。
皮膚も薄くなり、外部刺激に対して敏感になります。これにより、赤みやかゆみが出やすくなります。

乾燥性皮膚炎

皮膚の乾燥が進み、赤みやかゆみが発生する湿疹の一種です。

接触性皮膚炎

肌が敏感になり、化粧品や衣類の摩擦、金属アレルギーなどが原因で接触皮膚炎(かぶれ)が起こりやすくなります。
症状が長引く場合や悪化する場合は、アレルギー検査を行い、原因を特定することが大切です。

かゆみ

加齢に伴い皮脂の分泌が減少し、肌のバリア機能が低下することでかゆみが発生しやすくなります。
特に、乾燥性皮膚炎アトピー性皮膚炎が悪化しやすい傾向にあります。また、糖尿病や肝疾患が原因で全身のかゆみが出ることもあります。

乾癬(かゆみを伴うガサガサ)

免疫異常が原因で、銀白色のカサカサした表面の赤い湿疹ができる慢性皮膚病です。

白癬(水虫)

真菌(カビ)の一種が皮膚に感染し、かゆみや皮膚の剥がれを引き起こします。足や爪によく見られます。

いたみ

皮膚の炎症や帯状疱疹などのウイルス感染症が原因で、ピリピリとした痛みが発生することがあります。
帯状疱疹は特に中高年に多く、皮膚の神経に沿って強い痛みと水疱が現れます。

ヘルペス・帯状疱疹

免疫力が低下すると、過去にかかった水ぼうそうのウイルスが再活性化し、神経に沿って痛みや発疹を引き起こします。

できもの

加齢に伴い、脂漏性角化症(老人性イボ)や粉瘤(皮膚の下に袋状のしこりができる)などの良性腫瘍が増えやすくなります。
また、悪性黒色腫(メラノーマ)などの皮膚がんが現れることもあるため、気になるできものは早めに皮膚科で診察を受けることが重要です。

粉瘤(ふんりゅう)

皮膚の下にできる袋状のしこりで、炎症を起こすと腫れて痛みを伴うことがあります。

中高年の肌の悩みでよくある質問(FAQ)

Q1. 乾燥肌に適したスキンケアは?

A1. 高保湿成分を含むスキンケア製品を使用し、室内の湿度を保つことが重要です。

Q2. シミやそばかすを予防する方法は?

A2. 日焼け止めを毎日使い、美白成分が含まれたスキンケアを取り入れると良いでしょう。

Q3. たるみを改善する方法は?

A3. 表情筋トレーニングや保湿、コラーゲン生成を促す美容医療が有効です。

Q4. 帯状疱疹の予防方法は?

A4. 免疫力を維持する生活習慣を心がけ、ワクチン接種を検討するとよいでしょう。

Q5. 白癬(水虫)を防ぐ方法は?

A5. 足を清潔に保ち、通気性の良い靴を履くことが予防に役立ちます。

Q6. 皮膚の赤み(酒さ)を改善するには?

A6. 刺激の少ないスキンケアを選び、アルコールや香辛料を控えるとよいでしょう。

Q7. ヘルペスが繰り返しできる原因は?

A7. ストレスや免疫力低下が関与するため、十分な休息を取ることが大切です。

Q8. 粉瘤ができた場合の対処法は?

A8. 触らずに皮膚科を受診し、必要に応じて切除や薬の処方を受けましょう。

Q9. 肌のくすみを改善する方法は?

A9. 血行を促すマッサージや角質ケアを行い、新陳代謝を活発にすることが効果的です。

Q10. いつ皮膚科を受診すればいいですか?

A10. 皮膚トラブルが自己ケアで改善しない場合や、悪化していると感じたら、早めに専門医に相談しましょう。


高齢者に多い皮膚の問題

高齢者の肌は加齢とともに、皮膚の水分や皮脂の分泌量が減少し、バリア機能が低下することで外部の刺激を受けやすくなります。
紫外線による光老化も加わることで、シミやシワ、毛細血管拡張などが起こりやすくなります。

また、血行の低下により、肌の再生能力が遅くなり、傷の治りが悪くなることもあります。

さらに、免疫機能の低下により感染症にかかりやすくなり、いろいろな内臓の病気や使用される薬による影響などで、慢性的な皮膚病を抱える人も少なくありません。
ここでは、高齢者で問題となる症状や病気を紹介します。

かゆみ

かゆみは高齢者で最も多い症状の一つです。
皮膚自体に問題がある場合も多いですが、皮膚自体が問題がなくてもかゆみが出る場合もあり、皮膚そう痒症といいます。
冬場の乾燥による皮膚掻痒症は、適切な保湿で改善できますが、かゆみが長引く場合は、内臓疾患(腎臓・肝臓の病気)薬の副作用、アレルギーなど全身の病気が関与していることもあります。

老人性皮膚掻痒症

皮脂の分泌が減少し、肌のバリア機能が低下することで、特に冬季に強いかゆみを伴うことがあります。乾燥が主な原因ですが、かゆみの要因が特定できない場合も多く、慢性化しやすいのが特徴です。

乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)

加齢により皮脂の分泌が減少し、肌のバリア機能が低下することで乾燥が進み、かゆみや赤みを伴う湿疹が発生します。

アトピー性皮膚炎

高齢者にも発症し、近年症例数が増加しています。診断には特定の診断基準と悪性リンパ腫の除外診断が必要です。病態はIgE関連型と非IgE関連型に分類され、家塵ダニなどが関与することが多いとされています。

じんま疹・痒疹

突然のかゆみを伴う赤い発疹が出現し、数時間で消えるじんま疹は、食べ物やストレス、寒暖差が原因となることが多いです。痒疹は慢性的に皮膚が盛り上がり、かゆみが強く続くのが特徴です。

肝疾患・腎疾患によるかゆみ

肝臓や腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物が適切に排出されず、血中に蓄積した物質が皮膚を刺激してかゆみを引き起こします。

薬剤性のかゆみ

高齢者は複数の薬を服用することが多く、その副作用としてかゆみが現れることがあります。
特に、降圧剤や利尿剤、抗がん剤などが関係することが知られています。

水虫/皮膚真菌症

皮膚の免疫機能が低下すると、白癬(水虫)やカンジダ症などの真菌感染症が発生しやすくなります。
特に足や爪に多く見られ、放置するとなりにくく、重症化することがあります。

疥癬(かいせん)

疥癬虫というダニが皮膚に寄生し、強いかゆみを引き起こします。特に高齢者施設や介護環境での感染リスクが高く、早期の診断と治療が重要です。

いたみ

帯状疱疹

過去にかかった水ぼうそうウイルスが再活性化し、神経に沿って激しい痛みと水疱を引き起こす病気です。水疱が出るまえに痛みが出ることがあります。免疫力が低下する高齢者に多く、重症化するため、後遺症である帯状疱疹後神経痛もよくあります。早くに治療をすることが重要です。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)

細菌が皮膚の奥に感染し、熱をもって赤く腫れ、強い痛みを伴う炎症が起こります。
進行すると重篤な感染症となるため、早めの治療が必要です。

みずぶくれ/水疱

帯状疱疹
天疱瘡・類天疱瘡

自己免疫疾患の一種で、水疱が全身にでき、皮膚が脆弱になります。ステロイド内服治療が必要ですが、ステロイド剤の副作用や合併症が問題になることがあります。

しみ

老人性色素斑

長年の紫外線の影響で皮膚に茶色いシミができるもので、顔や手の甲に多く現れます。

肝斑

ホルモンバランスの変化により、顔の両側に左右対称に茶色いシミができることがあります。

皮膚がん(悪性黒色腫)

シミのように見えても、急に大きくなったり色が不均一だったりする場合は皮膚がんの可能性があるため注意が必要です。

あざ

紫斑病

加齢により血管がもろくなり、少しの刺激で皮下出血が起こることで、皮膚に紫色のあざができやすくなります。
血管の炎症で血管が痛んだり、血液の凝固に必要な血小板減少などが全身の病気で、打撲していないのにあざができることがあります。

静脈瘤

血流が滞ることで血管が膨らみ、皮膚の色が変わったりあざのように見えることがあります。

できもの

粉瘤(ふんりゅう)

皮膚の下に袋状のしこりができるもので、炎症を起こすと腫れて痛むことがあります。

脂漏性角化症(老人性イボ)

加齢に伴いできる良性のイボで、茶色や黒色の盛り上がった斑点として現れます。

皮膚がん(基底細胞がん)

しこりやできものが大きくなる場合は、皮膚がんの可能性があるため早期診断が重要です。

血流障害

閉塞性動脈硬化症

血管が詰まりやすくなり、足先が冷たくなったり、皮膚の色が変わることがあります。

糖尿病性壊疽

糖尿病による血流障害が進行すると、傷が治りにくくなり、組織が壊死してしまうこともあります。

レイノー病

血流が悪くなり、特に寒冷時に手足の指が白や青紫色に変色する症状が見られます。

高齢者のスキンケア

高齢者の皮膚は中高年と比べてさらにバリア機能が低下し、乾燥や感染症にかかりやすくなります。そのため、より丁寧なケアが求められます。

保湿の徹底

高齢者の肌は皮脂分泌が減少し、水分保持力も低下します。特に冬場は乾燥しやすいため、毎日の保湿が欠かせません。セラミドやヒアルロン酸を含む保湿剤を使用し、入浴後はすぐに保湿ケアを行いましょう。

優しい洗浄

皮膚が薄くなっているため、ゴシゴシ洗うと皮膚を傷める原因になります。低刺激の石鹸やボディソープを使用し、ぬるま湯で優しく洗うことが大切です。

血流促進とマッサージ

血行不良により皮膚のターンオーバーが遅れやすいため、軽いマッサージを行い、血流を促進することが重要です。定期的なストレッチや歩行運動も推奨されます手足が冷たく、足先の色が悪くなっていないかなどもよく観察することが大切です。

栄養バランスの改善

栄養の偏りが皮膚の症状の原因にもなります。健康な皮膚を維持するためには、たんぱく質、ビタミンA・C・E、亜鉛などの栄養素が重要です。

感染症予防

高齢者は免疫力が低下しているため、白癬(水虫)や帯状疱疹などの感染症にかかりやすくなります。
清潔を保ち、爪や皮膚に異常がないか定期的にチェックすることが大切です。
スキンケアだけでなく、帯状疱疹ワクチン接種などもおすすめします。

まとめ

年をとっても適切なケアを行うことで皮膚の健康を維持できます。日常的なスキンケアと褥瘡予防を徹底し、快適な生活を送れるよう心がけましょう。

 

 


後期高齢者でよくみられる皮膚疾患

介護が必要になる後期高齢者では以下のような特徴があります。

  • 皮膚のバリア機能が低下 加齢や栄養状態の悪化でさらに皮膚がもろくなっています。
  • 足腰が不自由になることで、同じ場所に圧がかかり褥瘡の発生しやすくなります。
  • 失禁は、おむつ皮膚炎を引き起こし、皮膚がふやけることで、褥瘡や真菌感染症などもおこしやすくなります。
  • 入院や施設への入所などに伴い、疥癬などにかかる機会が増えてしまいます。
  • いろいろな薬剤を飲んでいるため、薬疹のリスクもあります。

全身のかゆみ

頻度としては、乾燥や皮脂欠乏症が高い。
しかし、施設入所中のかたは疥癬に注意が必要である。

疥癬(かいせん)

ヒゼンダニが弱った皮膚に寄生し、夜を中心に強いかゆみを引き起こします。
特に高齢者施設や介護環境での人から人への感染リスクが多い。

臀部・陰部周囲の赤み

おむつ使用で皮膚が荒れおむつ皮膚炎(主に便の刺激による皮膚炎)が起こり、真菌感染症の合併も多い。
注意すべきものとして皮膚癌である乳房外Paget病がある。

おむつ皮膚炎
皮膚真菌感染:水虫
乳房外Paget

皮膚癌

年をとるほど、癌のリスクは上がります。
一般的には、だんだん大きくなり、形が不整で、びらん・潰瘍の合併する場合は癌の可能性を考えます。
顔面では基底細胞癌、足裏などの手足の先では悪性黒色腫、陰部では乳腺外Paget病などがあります。

基底細胞癌

頻度の高い皮膚悪性腫瘍であり、顔面、とりわけ鼻周囲によくできる。
初発時にはほくろと見分けがつきにくいこともある。

悪性黒色腫

四肢末端部や露光部にできる黒い病変でほくろに見えることもあります。
悪性度が高く、診断の遅れると命に関わることも多いです。

日光角化症(有棘細胞癌)

顔・手背などの光が当たる部分によくみられ、最初は湿疹のように見えることもあります。
ステロイド外用薬を使用してもよくならない場合は皮膚科に相談しましょう。

褥瘡(床ずれ)と予防

褥瘡(じょくそう)は長時間同じ姿勢をとることで皮膚の血流が途絶え、組織が痛んでくる状態です。
特に寝たきりの方や車椅子を使用している方の、骨が突出し肉が少ない部位(お尻、踵、後頭部など)によくできます。

予防としては体位変換や圧分散などの除圧と、スキンケア、十分な栄養管理が重要です。

体位変換

体の同じ部位に圧力がかかり続けると褥瘡ができやすくなります。2時間ごとに体位を変えることで血流を促し、褥瘡の発生を防ぎます。

圧力分散の工夫

体圧を分散させるため、エアマットやウレタンマットを活用することが推奨されます。また、クッションを使用して、特に骨が出っ張っている部分(かかと、仙骨、肘など)への圧力を軽減しましょう。

スキンケア

褥瘡の予防には皮膚を清潔に保つことが重要です。入浴や清拭で皮膚を優しく洗い、乾燥を防ぐために保湿剤をしっかり塗りましょう。

栄養管理

褥瘡を予防・改善するためには、たんぱく質やビタミンC、亜鉛の摂取が重要です。
十分な栄養が摂れない場合は、栄養補助食品の活用も検討すると良いでしょう。


参考文献
  • 日野治子. よく診る皮膚疾患. 治療. 2023​.
  • 清水宏. あたらしい皮膚科 第3版. 2018.
  • 田中直樹. 高齢者の皮膚掻痒症とその対策. 日本皮膚学会雑誌. 2022.
  • 山田一郎. 成人アトピー性皮膚炎の病態と最新治療. 皮膚科治療. 2023.
  • 牧野 輝彦. 光老化のアップデート. 皮膚病診療.  2023.
  • 山本良介ら. 後期高齢者によく見られる皮膚疾患の診断と治療. medicina. 2008.
  • 山下理絵ら. 高齢者のアンチエイジング. 皮膚病診療.  2023.
  • 磯貝 善蔵ら. 美しく老いるために-高齢化に備える皮膚科診療. 皮膚科の臨床 臨時増刊号 2018.

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