酒さ
酒さとは?
顔の赤みが続く原因・症状・スキンケア・治療法を皮膚科専門医が解説
酒さ(しゅさ)は、顔に赤みや火照りが繰り返し現れる慢性的な皮膚の病気です。
特に30〜50代の女性に多く見られ、日本ではまだ認知度が低いですが、国際的な成人有病率は約5.46%とされ、決して珍しい病気ではありません。
酒さは主に顔の中心部、特にほほ、鼻、あご、額、眼の周囲に症状が現れやすく、以下の4つのタイプに分類されます。
持続的な赤ら顔が特徴で、血管が浮き出て見えることがあります。
赤いぶつぶつや膿をもったニキビのような皮疹が現れます。evron_right
鼻が慢性的に腫れて、ゴツゴツとした形に変化します。進行すると「団子鼻」と呼ばれる状態になることもあります。vron_right
まぶたの赤み、乾燥感、異物感、かゆみなど、目の症状を伴います。vron_righ
これらの症状は単独で現れることもあれば、複数のタイプが重なることもあります。
酒さの原因と悪化因子
酒さの原因は一つではなく、さまざまな要因が関与していると考えられています。現在注目されているのは以下の点です。
- 皮膚のバリア機能の異常:皮膚の保護機能が低下し、刺激に対して過敏に反応しやすくなります。
- 自然免疫の異常:外敵から身を守る仕組みが過剰に働くことで炎症が起こると考えられています。
- 毛包虫(もうほうちゅう):顔の皮膚に常在するダニの一種「デモデックス」が異常に増殖すると、炎症を引き起こす可能性があります。
- 血管運動神経の異常:自律神経の乱れによって顔の血管が拡張しやすくなり、赤みが続くと考えられています。
悪化の原因としては、紫外線、暑さなどの温度変化、アルコールや香辛料の摂取、精神的ストレスなどがあります。
酒さの症状と診断
顔に赤みが出る・火照るという症状はアレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、花粉症皮膚炎、膠原病など他の疾患でも見られることがあります。また、これらの病気は酒さと合併して発症していることも珍しくありません。
これらの湿疹に使用されるステロイド外用は一時的な効果を現しますが、長期間にわたる漫然としたステロイド外用薬の使用により、
ステロイド依存性の酒さ様皮膚炎(いわゆる「ステロイド酒さ」)が生じることがあるため、注意が必要です。
酒さの治療法とスキンケア
拡張した血管を元に戻すことは難しく、酒さは完全に治る病気ではありません。
しかし、以下のような治療により症状をコントロールしていくことはできます。
外用療法
メトロニダゾールゲル(ロゼックス®)
最近保険適応になった薬です。炎症を抑える作用があり、副作用が少ないことで知られており、赤ら顔の治療に有効です。
イベルメクチンクリーム(ソブレラ®)
毛包虫を減らす作用があり、丘疹膿疱型に有効です。
非ステロイド系外用薬(ブルフェナク、アゼライン酸など)
紅斑や炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬です。
内服療法
テトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリンなど)
抗菌と抗炎症の効果があります。
漢方薬
酒さは「瘀血(おけつ)」という、血流が滞り起こると考えられ、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、加味逍遥散などの漢方薬が処方されます。
このほか、体の熱を冷まし火照りをとる白虎加人参湯なども使われることがあります。
レーザー治療(Vビームなど)
目立つ血管の除去や赤みの軽減に有効です。(当院では行っておりません)。
スキンケア指導
スキンケアは酒さ治療の大切な一部です。以下のポイントを意識したスキンケアをおこないましょう。
- メイクはノンコメドジェニック製品を選ぶ
酒さと上手に付き合うために
酒さは日常生活の中で悪化因子を避けることで、症状を和らげることができます。以下のポイントに注意しましょう。
- 紫外線を避ける:SPF30以上の低刺激性日焼け止めを使用しましょう。
- 急激な温度変化を避ける:暖房や熱い飲み物も悪化要因になります。
- 香辛料やアルコールを控える:個人差はありますが、症状が出やすい人は制限を。
- ストレス対策:ヨガや深呼吸などのリラクゼーション法も有効です。
- スキンケア製品を見直す:アルコールや香料の多い化粧品は控えましょう。
まとめ
酒さは見た目に大きな影響を与えるだけでなく、精神的な苦痛や社会生活への支障を引き起こすこともあります。
しかし、早期に皮膚科専門医を受診し、適切な治療とスキンケアを行うことで、症状のコントロールが可能です。
「顔の赤みが気になる」「市販薬が効かない」と感じたら、無理に我慢せず、一度皮膚科専門医にご相談ください。
自分の肌を正しく理解し、心地よい日常を取り戻しましょう。
参考文献
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. 日皮会誌. 2023.
