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ヘルペス/帯状疱疹

帯状疱疹、単純ヘルペス、水ぼうそうは、すべてヘルペスウイルスが関与する病気ですが、年齢や再発の可能性、重症度などには大きな違いがあります。いずれも早期治療が重症化予防のカギです。特に帯状疱疹は高齢者に多く、PHNという後遺症が残ることもあるため、予防のワクチン接種を積極的に検討しましょう。

帯状疱疹・ヘルペス・水ぼうそうの違いと基礎知識

水ぼうそうと帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)という同じウイルスです。一方、単純ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされます。

これらのウイルスはいずれも、一度感染すると神経の中に潜伏し、疲労やストレスなどで免疫力が落ちると再発するという特徴があります。

水痘と帯状疱疹の深い関係

水痘(すいとう)は、一般的に水ぼうそうと呼ばれ、子どものころにかかることの多いウイルス性の感染症です。このウイルスは一度体内に入ると、治った後も神経の奥深くに潜伏し、年齢を重ねたり、疲労やストレスで免疫力が低下したときに、再び活性化して帯状疱疹として発症します。

つまり、水ぼうそうと帯状疱疹は同じウイルスが引き起こす別の病気なのです。

帯状疱疹の症状と合併症のリスク

帯状疱疹は、体の左右どちらかに帯状に水ぶくれが現れ、強い痛みを伴う病気です。以下のような特徴があります。

  • ピリピリ・ズキズキとした神経痛
  • 赤く盛り上がった皮疹と水疱
  • 顔面や目のまわりにできる合併症のリスク

特に高齢者では、発症後に帯状疱疹後神経痛(PHN)という、長く続く痛みが残ることがあり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

帯状疱疹後神経痛(PHN)の症状と特徴

帯状疱疹後神経痛(PHN)とは、水疱など皮膚の見た目が治っているのに痛みだけ残ってつらい状態が続くことです。帯状疱疹が治った後も3ヶ月以上続き、重症になると、アロディニア(衣服が触れるだけでも強い痛みを感じる状態)が生じます。

  • ピリピリと電気が走るような痛み
  • 衣服が触れるだけでも神経が過敏に反応する
  • 夜間に痛みで眠れない
  • 痛みと同時にしびれや違和感が残る

この痛みは神経障害性疼痛と呼ばれ、通常の鎮痛薬が効きにくいのが特徴です。

PHNの発症率とリスク要因

PHNは特に高齢者に多く、60歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、約2割から3割がPHNになるとされています。また、以下のような方はPHNのリスクがさらに高くなります。

発症時の状態 初期の痛みが非常に強かった場合
病変の範囲 皮膚症状の範囲が広かった場合
治療の遅れ 早期に抗ウイルス薬治療を受けなかった場合
発症部位 顔面(三叉神経)や頭部に症状が出た場合

PHNに対する具体的な治療方法

PHNに対する治療は、痛みの原因である神経の異常な興奮を抑えることが目的です。

内服薬による治療
神経痛特化薬 プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)
三環系抗うつ薬 アミトリプチリンなど。痛みを感じにくくする効果があります
SNRI デュロキセチン。うつ症状を伴う痛みに効果があります
外用薬(塗り薬)による治療
  • カプサイシン:皮膚の神経を一時的に麻痺させて痛みを軽減します(保険適用外の市販薬)。
  • リドカインテープ:局所麻酔で痛みを和らげますが、当院では処方しておりません。
神経ブロック治療

痛みが強く、内服薬でコントロールできない場合には、ペインクリニックなどで神経の周囲に麻酔薬を注射する神経ブロック療法が行われることもあります。

帯状疱疹後神経痛を未然に防ぐためのポイント

PHNは一度起きると長期間続くため、予防が何よりも重要です。

  1. 早期治療の開始
    発症から72時間以内に抗ウイルス薬を開始することで、PHNのリスクを減らせます。
  2. ワクチンの接種
    サブユニットワクチン(シングリックス)は、PHNの発症も大幅に抑えることが証明されています。

日本国内における帯状疱疹の発症動向

帯状疱疹の患者数は年々増えています。日本では年間約60万人が発症しており、80歳までに3人に1人が発症すると言われています。

特に、子どもの水痘ワクチン定期接種によって水ぼうそうの患者が減少した結果、大人がウイルスに再接触する機会が減り、免疫のブースター効果が失われたことが要因の一つと指摘されています。

帯状疱疹ワクチンの重要性と推奨対象

ワクチン接種により、帯状疱疹の発症予防や、発症時の症状緩和、後遺症であるPHNの予防が可能です。発症リスクが急激に高まる50歳以上の方には、学会の指針でも接種が強く推奨されています。

2025年度から65歳以上の方などを対象に、帯状疱疹ワクチンの定期接種化が始まりました。特に以下の方は接種を積極的に検討しましょう。

  • 60歳以上の方
  • 過去に帯状疱疹を発症したことがある方
  • 糖尿病や喘息などの慢性疾患がある方
  • 免疫力が低下している方(がん治療中や免疫抑制剤の使用など)
乾燥弱毒生ワクチン(ビケン)

水痘ウイルスを弱毒化して免疫を強化するワクチンです。子どもの水ぼうそうワクチンと同じ成分ですが、成人向けに調整されています。

  • 対象:50歳以上
  • 回数:1回接種
  • 注意:免疫不全がある方には接種できません
サブユニットワクチン(シングリックス)

ウイルスのたんぱく質の一部のみを使用する安全性の高い不活化ワクチンです。

  • 対象:50歳以上(免疫不全者は18歳以上)
  • 回数:2回接種(2か月間隔)
  • 効果:発症予防効果は90%以上と極めて高い
  • 副反応:接種部位の痛みや発熱など、生ワクチンより副反応が出やすい傾向にあります

帯状疱疹ワクチンの比較表

比較項目 シングリックス(不活化) ビケン(生ワクチン)
ワクチンのタイプ サブユニットワクチン 弱毒生ワクチン
対象年齢 50歳以上(免疫低下者は18歳〜) 50歳以上
免疫低下者への接種 可能 不可能
投与回数 2回 1回
発症予防効果 97%(50歳以上) 51.3%(60歳以上)
効果の持続性 80%以上維持(7年目) 激減(7年目で約4%)
PHN予防効果 91%以上 66.5%
費用面 高額(1回 約22,000円) 比較的安価

シングリックスは予防効果や持続期間において明らかに優れていますが、副反応の頻度や費用を考慮する必要があります。一方、ビケンを選択した場合は、5年ごとの追加接種を検討するのが望ましいでしょう。

神戸市の帯状疱疹ワクチン助成制度と定期接種

神戸市では、その年度に65歳になる方を対象とした定期接種制度や、50歳以上の方への一部助成制度が設けられています。詳細は自治体の公式情報を確認してください。

神戸市:帯状疱疹ワクチンの定期接種について

まとめ:ワクチン接種で将来の健康を守る

水ぼうそうは子どもの病気と思われがちですが、そのウイルスが引き起こす帯状疱疹は大人にとって非常に身近なリスクです。

  • 80歳までに3人に1人が発症する
  • 発症後の神経痛が長引くケースが多い
  • ワクチンで予防・重症化回避が可能

健康なうちにこそワクチンでの備えが大切です。かかりつけ医に相談の上、接種を検討してみてください。


単純ヘルペスの特徴:唇や陰部に繰り返す水疱

単純ヘルペスとはどのような病気か

帯状疱疹(ヘルペス)

ヘルペスとは、正式には単純ヘルペスウイルス感染症といい、単純ヘルペスウイルス(HSV)によって起こります。このウイルスは一度体に入ると神経の中に潜伏し、免疫が落ちると何度でも再発するのが特徴です。

単純ヘルペスウイルスの種類と感染部位

ヘルペスの原因ウイルスには主に2つの型があります。

HSV-1(1型) 主に口のまわりにできる口唇ヘルペスの原因
HSV-2(2型) 主に陰部にできる性器ヘルペスの原因

近年では、オーラルセックスなどにより、型に関わらず口や性器に感染するケースも増えています。

口唇ヘルペスと性器ヘルペスの具体的症状

口唇ヘルペスは、風邪の後に出やすいため「熱の華」とも呼ばれます。唇の周囲にピリピリとした違和感が生じ、小水疱が集まって形成されます。

性器ヘルペスは、陰部や肛門まわりに水疱やただれが生じます。初感染時は強い痛みや発熱、リンパ節の腫れを伴い、排尿困難になるほど重症化することもあります。

ヘルペスが再発する主な原因

ウイルスは体内の神経節に潜伏しており、以下のような要因で再活性化します。

  • 疲労や寝不足
  • 精神的なストレス
  • 風邪や発熱
  • 強い紫外線(日焼け)

単純ヘルペスの診断と検査方法

多くは視診で診断可能ですが、必要に応じて以下の検査を行います。

Tzanck試験 水疱の細胞を顕微鏡で確認する検査
ウイルス抗原検査 簡易キットを用いてウイルスを特定する検査

抗ウイルス薬を中心とした治療法

治療には抗ウイルス薬の内服を用います。細菌ではないため、抗生物質は効果がありません

  • バラシクロビル(バルトレックス)
  • ファムシクロビル(ファムビル)
  • アメナメビル(アメナリーフ):再発性のみ適応

再発に備えるPIT療法(予め処方された薬の服用)

再発を繰り返す方には、PIT療法(Patient Initiated Therapy)が有効です。あらかじめ処方された薬を持ち歩き、違和感が出た瞬間に服用することで、症状を最小限に抑えることができます。

特にアメナリーフは、1回の服用で効果を発揮するため非常に利便性が高いですが、費用は比較的高額になります。この治療は、概ね年3回以上再発する方が適応となります。

妊娠中や免疫低下時の注意点

妊娠中に性器ヘルペスを発症すると、新生児に感染するリスクがあります。出産前に医師と相談し、適切な対策を立てることが不可欠です。また、免疫不全状態の方は重症化しやすいため、早期の受診を心がけてください。

ヘルペスの予防と日常生活における注意点

再発を防ぐには、日頃の体調管理が重要です。十分な睡眠と栄養を摂り、ストレスを溜めないようにしましょう。また、発症中はタオルや食器の共用を避け、他人にうつさない配慮も大切です。

まとめ:ヘルペスの再発を防ぎ快適な生活を

ヘルペスは非常に一般的な感染症ですが、繰り返す再発は生活の質を低下させます。軽視せず、早期治療と予防を心がけることで、悪化を防ぎましょう。不安な症状がある場合は、皮膚科や婦人科、泌尿器科の受診をお勧めします。

製薬会社マルホのホームページです。予防内服治療法(PIT)を中心に説明があります。

参考文献
  • 帯状疱疹診療ガイドライン2025
  • 皮膚科の臨床 Vol.63 No.6(2021年)
  • N Engl J Med 2013; 369:255-263
  • N Engl J Med 2015; 372:2087-2096
  • 皮膚病診療(2024年)ヘルペス・帯状疱疹検査
  • 日本皮膚科学会Q&A
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