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やけど(熱傷)の応急処置と受診の目安

やけど(熱傷)は、家庭の中でもっとも身近なけがのひとつです。
お湯や油、アイロン、ストーブなど、日常生活のさまざまな場面で起こる可能性があります。
また低温やけどは深いやけどとなりやすく、専門的治療が必要となる場合が多くあります。
深いやけどや広範囲のやけどで重症の場合には、全身状態が悪化して命に関わることがありますので、専門施設での治療が必要となります。
また重症でない場合でも、キズに細菌が繁殖したり、後遺症(キズあとのひきつれや盛り上がりなど)を残すこともあります。

やけどをした場合にはできるだけ早期に医療機関で診察を受けることが大事ですが、
最初の「応急処置」が、治り方やあとに残る傷跡を大きく左右します。

このページでは、「やけどをしたときにまず何をすればいいのか」「どんな時に皮膚科を受診すべきか」などを説明いたします。

やけど(熱傷)の原因とよくある場面

やけどは、熱(高温)や薬品、電気などが皮膚にダメージを与えることで起こります。
主な原因は以下のとおりで、5歳以下の子供のやけど、高齢者の低温やけどが比較的多いという報告もあります

  •  油はね・お湯・スープ・カップ麺などの液体によるやけど(最も多い)。
    中でも、子供では「高温の飲み物をこぼす」「炊飯器の蒸気口に触れる」といった事故が多くみられます。
    皮膚が薄いため、わずか数秒でも深いやけどになってしまうことがあります。
    高齢者や子供では高温の浴槽などでのやけどもあります。
  • フライパン・アイロンなどの接触によるやけど
  • ストーブ・カイロ・湯たんぽの長時間接触による低温やけど
  •  薬品(酸・アルカリ)による化学熱傷
  •  電気コードや感電による電撃熱傷

やけどの重症度

やけどの重症度は、広さ深さ(どこまで損傷が及んでいるか)、場所で決まります。

深さの重症度

皮膚は上から「表皮」「真皮」「皮下組織」に分かれており、どこまで熱が到達したかによって症状や治療方針が異なります。

分類  損傷の深さ  見た目の特徴  痛み 治り方
Ⅰ度熱傷 表皮まで 日焼けのような赤いヒリヒリ ヒリヒリ(知覚過敏) 数日で自然に治る
Ⅱ度熱傷(浅い) 真皮の浅い部分まで 赤い水ぶくれでぐじゅぐじゅし、強い痛み  強い痛み (知覚は残存) 約1〜2週間で治る
Ⅱ度熱傷(深い) 真皮の深い部分まで 白っぽく、水ぶくれが破れやすい 軽い痛み(知覚鈍麻)
より重症例では痛みがなく知覚消失
約3〜4週間で治るが、あとが残ることあり
Ⅲ度熱傷  皮膚全層〜皮下まで

乾いて硬く焦げたように黒い)

痛みはなし 自然には治らず手術が必要

最初は軽く見えても、時間が経つと深いやけどに変わることがあります。
深いⅡ度熱傷やⅢ度熱傷の場合はるのに時間がかかり、後遺症を残すこともあり、時に手術が必要となるので形成外科へ紹介いたします。

やけどの範囲

やけどの範囲は、身体の表面積の何パーセントにやけどが及んでいる計算して判定します。

目安としては、大人でも15%以上、子供や高齢者では10%以上の範囲に及ぶ場合は、入院が必要です。

面積の算出方法には様々のものがありますが、比較的小範囲の熱傷面積の評価としては掌を1%とする「手掌法」が簡単です。
また大人では9の法則、小児では5の法則が良く用いられます。

 「9の法則」
頭部・上肢(左右)・下肢(左右下腿・左右大腿)・体幹(前胸部・腹部・胸背部・腰背部臀部)の11カ所それぞれを9%、
陰部を1%として算出する方法です


9の法則

「5の法則」
頭部・上肢・下肢・体幹(前面・後面)を5の倍数で算出します。
幼児に使用されることが多く、幼児の頭部は20%、小児では15%、成人では5%と
年齢と体型によって算出方法が異なります。

5の法則

危険な部位や特殊なやけど

以下のやけどは熱傷面積に関わらず重症とされ入院が必要です

  • 顔面・手足・股間(会陰部)のⅡ度以上のやけど
  • 気道熱傷(熱い空気を吸うことでのどや気管がやけどした状態)
  • 電撃傷・化学熱傷などの特殊熱傷

やけどをしたときの応急処置

やけどは、最初の10分の応急処置がとても大切です。
間違った対処をすると、かえって悪化することがあります。

①すぐに冷やす

 やけどをしたら、できるだけ早く冷たい水道水を15〜30分ほどあてて冷やします。
 シャワーの流水をやさしくあてるか、洗面器などで冷やしましょう。
 軽いやけど(Ⅰ度)で小範囲のやけどは、しっかり冷やすだけでも痛みも治まり、

ポイント

  • 氷や保冷剤を直接あてると、凍傷を起こすおそれがあります。
  • 衣服の上から熱湯をかぶったときは、無理に服をはがさず、服の上から冷やしてください。

②患部を清潔に保つ

 泥や油がついているときは、水でやさしく洗い流します。
 消毒液は刺激が強いので使わないでください。

③水ぶくれはつぶさない

 水ぶくれ(みずぶくれ)は自然な「皮膚の保護膜」です。つぶすと感染しやすくなるため、自分では処置せず、皮膚科で判断を受けましょう。
 服を脱がせるようとしたり、女性ではストッキングを無理に脱ごうとすると、その時に水ぶくれを破いてしまう場合があるので
 そのまま水道水で冷やすのがよいでしょう。

④ 清潔なガーゼで覆う

 冷やしたあと、滅菌ガーゼなどを軽く当て、こすらないようにします。
 乾燥するとよりやけどが深くなることもあるので、ワセリンなどで患部を保護することも大切です。

⑤指輪などのアクセサリーは早めに外しましょう

 やけどの部位はだんだんに腫れてきますので、腫れる前に外しましょう

⑥痛みが強いときは鎮痛薬をのみましょう

 市販の痛み止め(アセトアミノフェンなど)を使用して構いません。

受診が必要なやけどは?

以下のような場合は、自己判断せず皮膚科・救急外来を受診してください。

  • 水ぶくれができている(Ⅱ度以上の可能性)
  • 顔・手・足・関節まわり・陰部など「動かす部分」のやけど
  • 広範囲(体の1〜2%以上、手のひら1枚分以上)
  • 白っぽく感覚がない、黒く焦げている
  • 小さな子ども・高齢の方・持病のある方
  • 油・化学薬品・電気によるやけど
  • 発熱・腫れ・膿が出るなど感染のサインがあるとき

受診までのあいだも冷却・清潔保持を続け、患部をこすらないようにしましょう。

皮膚科での治療

やけどの深さや範囲に応じて、治療法が異なります。

Ⅰ度熱傷(軽いやけど)

炎症を抑えるため、抗炎症作用のある軟膏(ワセリンやステロイド外用薬)を使用します。
紫外線に当たると色素沈着が残りやすいので、しばらくは日焼け止めを使用しましょう。

浅いⅡ度熱傷

やけど部分が赤く痛みが強い場合、湿潤環境を保つことが治りを早くします。
ワセリンや非固着性ガーゼで保護し、滲出液(じゅくじゅくした液)の量に応じて被覆材を使うこともあります。
感染を防ぐため、毎日の清潔な処置が大切です。

深いⅡ度〜Ⅲ度熱傷

深いやけどでは、皮膚の再生が難しいため、植皮手術が必要になることもあります。
また、顔や関節など機能に関わる部位では、瘢痕(はんこん:あと)やひきつれを防ぐために、早めに専門医療機関へ紹介させていただきます。

広い範囲のやけど・気道のやけど

広い範囲のやけど(10%以上)や呼吸の通り道(気道)のやけどは、命に関わるやけどです。
入院での治療が必要になりますので、救急車をお呼びください。

家庭でのケアと注意点

💧毎日やさしく洗浄し、指示された薬や被覆材を交換しましょう。

🚫市販の軟膏を自己判断で使用するのは避けましょう(感染やかぶれの原因になることがあります)。

💊痛みが強いときは無理せず鎮痛薬を。

🩹水ぶくれが破れたら、早めに皮膚科へ。

やけどを防ぐためにできること

家庭での事故は、ほんの少しの注意で防ぐことができます。

👶 お子さんの場合 親が注意

  • 調理器具の電気コードをカウンターにぶら下げない
  •  熱い飲み物は,子どもが手を伸ばして届く範囲には置かない
  •  熱い飲み物を飲んでいるときに,子どもを膝の上に座らせない
  •  電子レンジから熱い食べ物を安全に取り出す方法を年長児に教えておく
  •  子どもが熱い液体の入った鍋を引き下ろせないように,前側のコンロの使用は最小限に,鍋の
    取手は横向きにする
  •  キッチンに子どもが入ってこないように柵などを設置する
  •  お風呂のお湯やシャワーの温度は42度以下,30秒は手で触って確かめる
  •  子どもを浴室に放置しない
  •  給湯器を調整して,蛇口の温度が48.8℃以下になるようにする

👵 高齢の方の場合 低温やけどに注意

カイロや湯たんぽを直接肌に当てない。

電気毛布は長時間同じ部位にあてないよう注意。

🔥 キッチンでの注意

揚げ物中はお子さんを近づけない。

袖口の広い服は火に触れやすいので注意。

まとめ

やけどは、誰にでも起こりうる日常のけがです。

予防していても起こることがありますが、専門的な治療より「最初の応急処置」と「早めの受診」で、傷跡を最小限に抑えることができます。

文献
  • 清水宏. あたらしい皮膚科 第3版. 2018.
  • 熱傷診療ガイドライン第3版 2023. 日皮会誌. 2024.
  • 熊川靖章. どう診るか?どこまで診るか?庄野の軽症外科-熱傷. 小児科. 2018​.
  • 沢田泰之. 小児によくみる皮膚疾患 熱傷,凍瘡.小児科診療.  2015.
  • 浅井 俊弥. 皮膚科開業医を受診する熱傷患者の統計. 皮膚病診療. 2016.
  • 竹井寛和. こどもの熱傷の予防指導. 小児科診療. 2022.
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