いぼ・うおのめ・たこ・皮膚癌健診
イボ、水いぼ、ウオノメ、タコはどう違うのでしょうか?
イボは、皮膚から盛り上がる小さなできものでの俗称で、皮膚科でのイボや水イボは、主にウイルス感染が原因で発症します。皮膚の免疫が落ちている方がなりやすく、アトピー性皮膚炎、多汗症、その他に湿疹のある方は注意が必要です。
また、ご年配の方のイボは、皮膚腫瘍であることもあり、年を取って出来たイボは皮膚科受診をお奨めします。
ウオノメは、大人の足の裏や趾(ゆび)などにできる、5mm程の皮膚が硬くなった病変で、歩行や圧迫により激しい痛みを伴います。中心に魚の眼のような芯が見え、ウオノメと呼ばれますが、専門用語では“鶏眼(けいがん)”と言います。
子供の足裏にウオノメそっくりで痛みを伴うイボ(ミルメシア)が出来ることもあります。
タコ(胼胝)もウオノメと同じく、皮膚の一部(角質)が分厚く硬くなったものですが、ウオノメと違い足以外にもでき、痛みはありません。
イボを伴う疾患
以下が、イボができる良性の皮膚疾患の一例です。
手足のイボ(尋常性疣贅)
足の裏のものは”たこ”や”うおのめ”と間違える方も多くありますが、小さな傷やひび割れからヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入し、発症しする病気です。放っておいたり、無理に削ると感染が広がり悪化することもあります。
小さな盛り上がりが皮膚に現れ、表面はザラザラしています。手や足、特に指や足の裏にできやすいです。
大きさは数mmから1cm程度で、痛みやかゆみはどありませんが、足の裏にできた場合は歩行時に痛みを感じることがあります。
液体窒素を用いた冷凍療法で治療します。治療は数回にわたることが多く、特に足の裏にできた場合は治療が長引くことがあります。
老人性イボ(脂漏性角化症)
加齢に伴って発症する良性の腫瘍で、高齢者に多く見られます。色は、薄茶色から黒色まで様々で、顔や体、手など、手のひらや足の裏以外の全身のどこにでもできます。
みずいぼ(伝染性軟属腫)
伝染性軟属腫ウイルスによって引き起こされる皮膚感染症で、子供によく見られます。
直接の肌と肌の接触や、共用のタオルやおもちゃを介して感染します。特に、プールや幼稚園などの公共の場で広がりやすいです。
いぼは小さくて丸い形で、直径は1mmから5mm程度です。表面はつやつやして、真ん中が少し凹でいることが特徴です。
軽いかゆみを伴うことがありますが、通常は痛みはありません。
除去の際には、専用のピンセットで一つづつ取り除きます(痛みを伴うため、ご希望があれば事前に局所麻酔のテープを貼ります)。イボと同じように冷凍凝固療法を行うこともあります。
いずれも極めて有効な治療法ですが、子供たちとって痛みや不安を強いる治療法であることが欠点です。
ミズイボが自然に治ることも多い病気であることから、様子を見る場合もありますが、放っておくと広がり治療が長引き、周囲の子供へ感染させることもあります。
数が多い場合は通院が多くなりますので、早めに除去することもおすすめしますが、
大人たちがよくに話し合って、責任をもって子供にとって最良の治療方針を選択してあげる必要があると考えます。
アクロコルドン・スキンタッグ(首のイボ)
首や腋かに中高年期にできるイボは、主に線維腫と言われる皮膚の良性腫瘍です。放っておいても悪性変化はみられませんが、見た目や触った感触が気になる場合は治療の対象となります。
治療法は、小さなハサミによる切除や、液体窒素による凍結療法、C O 2レーザーによる焼灼です。
ウオノメ(鶏眼)とタコ(胼胝)
主に足の裏や指にできる、直径5〜7mmほどの病変で、皮膚の表面(角質)の塊からなります。中心に魚の眼のような芯が見え、俗にウオノメと呼ばれますが、正式には鶏眼(けいがん)といいます。
鶏眼の原因は足の裏や指にかかる物理的な圧迫です。例えば、サイズの合わない靴を履いていると、特定の部位に繰り返し刺激が加わります。この刺激が続くことで、防御反応として角質が厚くなり、鶏眼が形成されます。、この芯が皮膚に刺さるようになり痛みを伴います。
歩行時に靴に圧迫されると、強い痛みを感じることがあり、これが日常生活に支障をきたすこともあるため、早めの対処が重要です。
タコは専門的には胼胝(べんち)といいます。ウオノメと同じように慢性の圧迫などの刺激に対しての皮膚の反応性変化で、角質が分厚くなったものです。
必ずしも足に出来る訳ではなく、ウオノメと違い痛みはありません。
鶏眼も胼胝も根本的には、除圧などで刺激の原因を取り除くことが必要ですが、鶏眼は痛みを取る治療をまず行います。
痛みを取る治療法としては、スピール膏のようなサリチル酸を含む外用薬を使用して角質を柔らかくして、芯の部分を切り取る方法が一般的です。
タコについては、必要に応じて硬くなった角質を軟膏などで軟らかくしたり、スピール膏やハサミやメスなどを用いて除去したりします。
予防には、足に合った靴を選ぶことが大切です。特に、長時間立つ仕事をしている方は、靴のサイズや形状に注意し、適切なインソールを使用することが効果的です。また、足の形状に合ったストレッチや運動を行うことで、鶏眼の発生を防ぐことができます。
鶏眼も胼胝も、正しい知識と対策を持つことで、予防や改善が可能です。
また、自己判断での治療は感染症を引き起こす可能性があるため、専門医の診察を受けることをお勧めします。
皮膚癌
皮膚癌は、皮膚に発生する悪性腫瘍(癌)で、出来ればなりたくはありませんが、紫外線や遺伝的要因、環境要因などが関係し、誰でもかかりうる病気です。
皮膚癌にはいくつかの種類があり、それぞれの特徴やリスク要因を理解し早期発見することが重要です。
以下では、よく見られる皮膚癌の種類と、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
基底細胞癌(Basal Cell Carcinoma)
基底細胞癌は、皮膚の最も外側にある基底細胞から発生する癌で、最も一般的な皮膚癌です。頻度の高い皮膚悪性腫瘍であり、日光にさらされやすい顔面、とりわけ鼻周囲に好発します。
基底細胞癌は、通常はゆっくりと成長し、転移することは少ないですが、放置すると周囲の組織を侵食することがあります。
初発時はほくろと見分けがつくく放置されることがあります。
日光角化症(Actinic Keratosis)
日光角化症は、紫外線による皮膚のダメージが原因で発生する有棘細胞癌の前癌病変で、顔や手背など日焼けする場所にみられます。。
最初は湿疹区別がつきくいですが、ステロイドで改善せず、皮膚がカサカサして赤みを帯び、触るとざらざらした感触があります。
放置すると、有棘細胞癌に進展する可能性があるため、早期の治療が推奨されます。
有棘細胞癌(Squamous Cell Carcinoma)
有棘細胞癌は、皮膚の表皮にある有棘細胞から発生します。基底細胞癌と同様に、日光にさらされる部位に多く見られ特に、日焼けや皮膚の傷がある部位に発生しやすいですが、転移のリスクが高いのが特徴です。
初期症状としては、赤くて硬いしこりや、潰瘍ができることがあります。
悪性黒色腫(Melanoma)
悪性黒色腫メラノーマは、皮膚の色素細胞であるメラノサイトから発生する癌で、簡単に言えばほくろの癌です。皮膚癌の中でも最も悪性度が高く、診断の遅れが命に関わります。近年増加傾向にあり、手足の先だけでなく、日の当たるところによく見られます。
ほくろの様にみえますが、色や形が不均一で、急激に大きくなることがあります。
転移が早く、早期発見が重要です。特に、直径が6mm以上のほくろや、形が不規則なものには注意が必要です。
オプチーボなど免疫チェックポイント阻害剤など治療選択肢が増えています。
皮膚癌のリスク要因
皮膚癌のリスクを高める要因には、以下のようなものがあります。
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紫外線曝露: 日光に長時間さらされることが、皮膚癌の主な原因です。特に、日焼けを繰り返すことや、人工的な日焼け(サンタン)もリスクを高めます。
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肌の色: 明るい肌の人は、メラニン色素が少ないため、紫外線の影響を受けやすく、皮膚癌のリスクが高まります。
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家族歴: 皮膚癌の家族歴がある場合、リスクが高まることがあります。
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免疫力の低下: 免疫力が低下している人(例:HIV感染者や臓器移植後の患者)は、皮膚癌のリスクが高くなります。
皮膚癌の予防と早期発見
皮膚癌を予防するためには、以下のポイントに注意することが重要です。
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日焼け止めの使用: 外出時には、SPF30以上の日焼け止めを使用し、2時間ごとに塗り直すことが推奨されます。
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適切な服装: 長袖の衣服や帽子を着用し、日光を避ける工夫をしましょう。
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定期的な皮膚チェック: 自分の皮膚を定期的にチェックし、ほくろやしみの変化に気づくことが大切です。特に、形や色が不均一なもの、急に大きくなったものには注意が必要です。
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専門医の受診: 皮膚に異常を感じた場合は、自己判断せずに皮膚科専門医を受診することが重要です。早期発見が治療の成功率を高めます。
文献
- 清水宏. あたらしい皮膚科 第3版. 2018.
- 江川 清文. いぼ・水いぼ. 小児科 2021.
- 加藤恒平. 鶏眼. 皮膚病診療 2017.
- 山本洋介ら. 後期高齢者によく見られる皮膚疾患の診断と治療. medicina 2008.