湿疹・皮膚炎
正しい知識で手湿疹・肌トラブルを防ぐ!
皮膚科専門医が湿疹の正しい知識とケア方法を説明します
湿疹は、肌が赤くなったり、かゆみを伴ったりする炎症の一種です。
湿疹は炎症の経過に伴い、赤み(紅斑)、腫れ(丘疹)、水ぶくれ(水疱、嚢胞)と進行し、改善に伴い、びらんにかさぶた(結痂;痂皮)ができ、落屑(鱗屑)を伴い治癒していきます。
また急性湿疹が慢性化することで、隆起したり(苔癬化)、シミになる(色素沈着を来す)こともあります。
こららの経過を湿疹三角と言います。
湿疹の原因はさまざまで、外部からの刺激物質やアレルギー反応、ストレスなどが関与しており、原因が明らかでないものは”湿疹”とのみ病名がつけられます。
特に、手湿疹は、日頃から化学薬品を扱う、水仕事をするひと、理・美容師、看護師、調理・炊事・皿洗い業で、職業性皮膚疾患として診断がされます。
主要な湿疹の種類
接触性皮膚炎
接触性皮膚炎(かぶれ)は、皮膚が特定の物質に触れることで炎症を起こす状態を指します。この病気は、刺激物やアレルゲンに対する反応として現れ、主に以下の2つのタイプに分けられます。
刺激性接触皮膚炎
皮膚に直接触れた刺激物によって炎症が引き起こされて起こる湿疹です。例えば、強い洗剤や化学薬品、摩擦などが原因となります。
このタイプは、誰にでも起こる可能性があり、症状は触れた直後に現れることが多いです。
アレルギー性接触皮膚炎
特定の物質に対してアレルギー反応を示す人にのみ発生する湿疹です。アレルゲンに触れることで、免疫系が反応し、数時間から数日後に症状が現れます。アレルギーが成立するまでには時間がかかることがありますが、一度アレルギーができると、再度その物質に触れた際にすぐに反応が出ることがあります。
症状
原因物質が触れた部分に境目がはっきりした湿疹が出ます。
治療法
接触性皮膚炎の治療には、以下の方法が一般的です:
- 原因物質の特定と回避:まずは、どの物質が原因かを特定し、それを避けることが重要です。
- 外用薬:ステロイド外用剤を使用することで、炎症を抑え、かゆみを軽減します。軽度の症状であれば、市販の薬を使うことも可能です。
- 保湿:皮膚のバリア機能を保つために、保湿剤を使用することが推奨されます。
- 接触性皮膚炎は、早期に適切な対処を行うことで改善が期待できます。症状が重い場合や長引く場合は、皮膚科を受診することが重要です。
アトピー性皮膚炎
遺伝的な素因と環境因子が関与し、幼少期から発症する慢性の皮疹で、強いかゆみを伴います。 くわしくはアトピー性皮膚炎のページを参照にしてください。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、皮脂がたくさん出る場所にできる湿疹のことです。特に、頭や顔、脇の下などに赤い湿疹や黄色っぽいフケが見られるのが特徴です。
この病気は、思春期以降の人や赤ちゃんに起こります。赤ちゃんの場合は、1歳までに自然に治ります(乳児脂漏性湿疹を参照してください)。大人の場合は、慢性的に続くことが多く、改善したり悪化したりします。
原因は、皮膚にいる「マラセチア」というカビが関係しています。このカビは皮脂を栄養にして増えるため、皮脂が多いと症状が悪化しやすくなります。また、ストレスやホルモンの変化も影響することがあります。
治療には、皮膚を清潔に保つことが大切です。優しく洗顔やシャンプーを行い、特に、抗真菌薬やステロイド薬が効果的です。
症状が気になる場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
貨幣状湿疹
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)は、皮膚にコインのような丸い湿疹ができる病気です。湿疹は直径1〜5cmほどで、赤っぽく、表面に乾いたフケのようなものがつくことがあります。特に冬に多く見られ、腕や脚、腰などに現れることが多いです。強いかゆみがあり、掻くとさらに悪化することがあります。
原因としては、乾燥した肌や虫刺され、接触皮膚炎などが関係しています。
治療には、炎症を抑えるためのステロイド薬や、かゆみを和らげる抗ヒスタミン薬が使われます。また、肌を清潔に保ち、保湿を心がけることも大切です。
早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることで症状は改善します。掻きすぎないように注意し、肌をいたわるケアを続けましょう。
自家感作性皮膚炎
自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)は、皮膚の一部にできた病変が急に悪化し、全身に広がる皮膚の病気です。
特に足(下腿)に発生することが多く、赤みや腫れ、かゆみを伴う小さな湿疹が特徴です。この湿疹は、腕や脚、体、顔などに左右対称に現れることがよくあります。
また、発熱や体のだるさなどの全身症状が出ることもあります。
原因は、最初にできた病変(原発巣)から出た物質が体内に広がり、アレルギー反応を引き起こすことで発症すると考えられています。
最初の病変は、貨幣状湿疹や接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、白癬(はくせん)などが関係している場合があります。
治療では、最初の病変を治すことが大切です。ステロイドの塗り薬や、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬を飲むことで症状を改善します。
この病気は、皮膚の状態が急に変わるため、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
皮膚に異変を感じたら、すぐに専門医に相談しましょう。
うっ滞性皮膚炎
うっ滞性皮膚炎(うったいせいひふえん)は、足の血液の流れが悪くなることで起こる皮膚の病気です。特に、立ち仕事をする人や高齢者、女性に多く見られます。
この病気では、足首の周りやふくらはぎに小さな赤い出血が現れ、進むと黒っぽく変色してきます。血流が滞ることで、皮膚が萎縮したりフケのように皮がむけたり、湿疹ができやすくなり、軽い傷でも潰瘍ができやすくなることがあります。
うっ滞性皮膚炎は、足の血液が戻りにくくなり、静脈に血液がたまる「慢性静脈不全」が原因です。この状態では、血液の成分が皮膚に沈着し、皮膚の色が黒っぽくなります。
治療では、湿疹を抑えるために薬を使うとともに、血液の流れを良くすることが重要です。弾性包帯やストッキングを利用して足を圧迫すると効果的です。また、静脈瘤がある場合は手術を検討することもあります。普段の生活では、足を高くして休むなどの工夫も大切です。
うっ滞性皮膚炎は内科的な血流障害の治療がポイントです。皮膚科的な生活指導でむくみが収まらない場合はないかをご紹介いたします。
皮脂欠乏性湿疹
皮脂欠乏性湿疹は、皮膚が乾燥してかゆみや湿疹ができる状態です。加齢や入浴時の洗いすぎによって皮脂や汗の分泌が減少するが原因となります。
これにより、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になります。特に冬の乾燥した時期に悪化しやすく、高齢者の脚などに多く見られます。
予防には、入浴時に肌を優しく洗い、必要以上にこすらないことが大切です。また、乾燥を防ぐために保湿剤を使うことも効果的です。
湿疹ができた場合は、医師から処方されたステロイド外用薬を使って治療します。その後はしっかり保湿してりケアすることが大切です。
汗疱
■湿疹の主な原因
原因 | 説明 |
---|---|
アレルギー | 花粉、金属、食品などによる過敏反応(I型またはIV型) |
ストレス | 自律神経や免疫系への影響により皮膚の防御機能が低下 |
環境因子 | 乾燥、気温差、紫外線、洗剤・化学物質など |
手湿疹は、頻繁に手を洗ったり、洗剤などを使用する機会が多い人に発症しやすく、主婦や医療従事者、美容師などに多く見られます。赤み、かゆみ、割れ、ささくれ、水疱、鱗屑(ふけのような皮むけ)など多彩な症状があります。
■原因分類(ガイドライン準拠)
- 刺激性接触皮膚炎:手湿疹の約70%を占める。物理的・化学的刺激が直接皮膚を障害します。
- アレルギー性接触皮膚炎:洗剤やゴム手袋などに含まれるアレルゲンによる免疫反応。
- 蛋白質接触皮膚炎:食品や動物性タンパク質による即時型アレルギー反応。
- アトピー型手湿疹:バリア機能の低下したアトピー素因のある人に発生しやすい。
■形態分類(図表)
種類 | 特徴 |
---|---|
角化型手湿疹 | 手のひらに厚い鱗屑。亀裂を伴い、小水疱はなし |
進行性指掌角皮症 | 指先〜指腹の乾燥と粗造。悪化で亀裂へ |
貨幣状型手湿疹 | 手背に硬貨大の湿疹が多数。痒みが強い |
再発性水疱型(汗疱型) | 小水疱が多発し、強い痒みを伴う。夏に悪化しやすい |
乾燥・亀裂型 | 手の乾燥と亀裂が主体。冬季に増悪 |
【接触性皮膚炎の症状と治療】
症状は以下のようなものです:
- かゆみ、紅み、灼熱感
- 水疱(特にアレルギー性で顕著)
- 慢性化で苔癬化、肥厚、亀裂
■診断と検査
- パッチテスト:遅延型アレルギーの原因特定に有効
- プリックテスト:ラテックスなどの即時型アレルゲンに対応
■治療の基本
治療内容 | 解説 |
---|---|
外用薬 | ステロイド外用薬、カルシニューリン阻害薬、保湿剤など |
原因除去 | アレルゲンや刺激物の特定と回避 |
生活指導 | 手袋使用、洗剤選び、ストレス管理、就労指導など |
湿疹、手湿疹、接触性皮膚炎は非常に一般的な皮膚疾患ですが、その背景や原因、症状は多岐にわたります。正しい知識とケアを実践することで、つらい症状を軽減し、再発の予防が可能です。
とくに、ガイドラインに基づいた診断と治療は効果的です。肌トラブルにお悩みの方は、早めに専門医に相談しましょう。
【患者さん向け 湿疹・手湿疹・接触性皮膚炎 Q&A】
湿疹や手湿疹、接触性皮膚炎について、よくあるご質問をわかりやすくまとめました。症状でお悩みの方、ご家族が悩んでいる方も、ぜひご参考にしてください。
Q1. 湿疹はうつる病気ですか?
A. いいえ。湿疹は感染症ではないため、人にうつることはありません。ただし、掻きむしった部分に細菌が感染してしまうと、とびひのように広がることがあるため、注意が必要です。
Q2. 湿疹とアトピー性皮膚炎はどう違うのですか?
A. 湿疹は皮膚の炎症全般を指す広い意味の言葉で、さまざまな原因や種類があります。アトピー性皮膚炎はその中でも慢性で再発を繰り返す湿疹の一つで、アレルギー体質や家族歴などが関係しています。
Q3. 手湿疹の原因はなんですか?
A. 原因は主に次の4つに分けられます:
- 洗剤や消毒などの刺激による「刺激性接触皮膚炎」
- ゴムや金属などによる「アレルギー性接触皮膚炎」
- 食品成分に触れて起きる「蛋白質接触皮膚炎」
- アトピー体質のある方に多い「アトピー型手湿疹」
Q4. 湿疹や手湿疹はどうやって治療するのですか?
A. 主な治療方法は以下の通りです:
- ステロイド外用薬や保湿剤などの塗り薬
- アレルゲンを調べて避ける(パッチテスト)
- 手袋やハンドクリームなどによるスキンケア
- 必要に応じて内服薬(かゆみ止め、抗アレルギー薬など)
Q5. 手湿疹は完治しますか?
A. 原因を特定し、それを避けることで完治も可能です。ただし、再発しやすい病気でもあるため、日々のスキンケアや生活習慣の見直しが大切です。
Q6. 市販薬で治せますか?
A. 軽い症状なら市販のステロイド外用薬や保湿剤でよくなることもありますが、症状が長引く・悪化する場合は皮膚科の受診をおすすめします。間違った薬の使い方で悪化するケースもあります。
Q7. 子どもにも湿疹や手湿疹はできますか?
A. はい。特にアトピー体質があるお子さんや、手洗いや消毒の多い生活をしている子どもは湿疹になりやすいです。子どもは皮膚が薄くデリケートなので、早めの対処が大切です。
Q8. 冬に湿疹が悪化するのはなぜですか?
A. 冬は空気が乾燥しているため、皮膚のバリア機能が低下しやすくなります。また、暖房による乾燥や、手洗いの回数が増えることも影響します。保湿をしっかり行うことが予防になります。
Q9. 湿疹を防ぐために普段からできることは?
A. 日常生活でできる予防法はこちらです:
- 手洗い後は必ず保湿をする
- 洗剤や薬品を扱うときは手袋を使う
- 刺激の少ない石けんやハンドソープを選ぶ
- ストレスをためないようにする
Q10. 湿疹で皮膚科を受診するときに必要なことは?
A. 湿疹の出るタイミングや使っている化粧品・洗剤などをメモしておくと、診察の助けになります。また、症状が出た時の写真を撮っておくのも有効です。
湿疹や手湿疹は、原因を知って正しくケアすることで改善が期待できます。気になる症状があるときは、早めに皮膚科専門医へ相談しましょう。