メニュー

湿疹・皮膚炎 

正しい知識で手湿疹・肌トラブルを防ぐ!
皮膚科専門医が湿疹の正しい知識とケア方法を説明します

湿疹は、肌が赤くなったり、かゆみを伴ったりする炎症の一種です。


湿疹は炎症の経過に伴い、赤み(紅斑)、腫れ(丘疹)、水ぶくれ(水疱、嚢胞)と進行します。
改善に伴い、びらんにかさぶた(結痂;痂皮)ができ、落屑(鱗屑)を伴い治癒していきます。
また急性湿疹が慢性化することで、隆起したり(苔癬化)、シミになる(色素沈着を来す)こともあります。
こららの経過を湿疹三角と言います。

湿疹の原因はさまざまで、外部からの刺激物質やアレルギー反応、ストレスなどが関与しており、原因が明らかでないものは”湿疹”とのみ病名がつけられます。

特に、手湿疹は、日頃から水仕事をするひとで多い湿疹で、刺激性の物質が原因になることが多く女性に多くみられます。

理・美容師、看護師、調理・炊事・皿洗い業でなどでは職業性に起こり問題になります。

主要な湿疹の種類

接触性皮膚炎

接触性皮膚炎(かぶれ)は、皮膚に特定の物質に触れることで、物質の刺激や、物質へのアレルギー反応としておこる湿疹です。

原因物質が触れた部分に境目がはっきりした湿疹が出ます。とくに手に起こるものは”手湿疹”とよばれます。

原因物質の特定と回避や外用薬での治療が重要です。

詳しくは接触性皮膚炎のページを参照してください。

アトピー性皮膚炎

遺伝的な素因と環境因子が関与し、幼少期から発症する慢性の皮疹で、強いかゆみを伴います。

くわしくはアトピー性皮膚炎のページを参照にしてください。

脂漏性皮膚炎 

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、皮脂がたくさん出る場所にできる湿疹のことです。
特に、頭や顔、脇の下などに赤い湿疹や黄色っぽいフケが見られるのが特徴です。

この病気は、思春期以降の人や赤ちゃんに起こります。赤ちゃんの場合は、1歳までに自然に治ります(乳児脂漏性湿疹を参照してください)。
大人の場合は、慢性的に続くことが多く、改善したり悪化したりします。

原因は、皮膚にいる「マラセチア」というカビが関係しています。
このカビは皮脂を栄養にして増えるため、皮脂が多いと症状が悪化しやすくなります。
また、ストレスやホルモンの変化も影響することがあります。

治療には、皮膚を清潔に保つことが大切です。優しく洗顔やシャンプーを行い、特に、抗真菌薬やステロイド薬が効果的です。
症状が気になる場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。

貨幣状湿疹

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)は、皮膚にコインのような丸い湿疹ができる病気です。

湿疹は直径1〜5cmほどで、赤っぽく、表面に乾いたフケのようなものがつくことがあります。
特に冬に多く見られ、腕や脚、腰などに現れることが多いです。強いかゆみがあり、掻くとさらに悪化することがあります。

原因としては、乾燥した肌や虫刺され、接触皮膚炎などが関係しています。

治療には、炎症を抑えるためのステロイド薬や、かゆみを和らげる抗ヒスタミン薬が使われます。
また、肌を清潔に保ち、保湿を心がけることも大切です。

早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることで症状は改善します。
掻きすぎないように注意し、肌をいたわるケアを続けましょう。

自家感作性皮膚炎

自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)は、皮膚の一部にできた病変が急に悪化し、全身に広がる皮膚の病気です。
特に足(下腿)に発生することが多く、赤みや腫れ、かゆみを伴う小さな湿疹が特徴です。
この湿疹は、腕や脚、体、顔などに左右対称に現れることがよくあります。
また、発熱や体のだるさなどの全身症状が出ることもあります。

原因は、最初にできた病変(原発巣)から出た物質が体内に広がり、アレルギー反応を引き起こすことで発症すると考えられています。
最初の病変は、貨幣状湿疹や接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、白癬(はくせん)などが関係している場合があります。

治療では、最初の病変を治すことが大切です。ステロイドの塗り薬や、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬を飲むことで症状を改善します。
この病気は、皮膚の状態が急に変わるため、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
皮膚に異変を感じたら、すぐに専門医に相談しましょう。

うっ滞性皮膚炎

うっ滞性皮膚炎(うったいせいひふえん)は、足の血液の流れが悪くなることで起こる皮膚の病気です。
特に、立ち仕事をする人や高齢者、女性に多く見られます。

この病気では、足首の周りやふくらはぎに小さな赤い出血が現れ、進むと黒っぽく変色してきます。
血流が滞ることで、皮膚が萎縮したりフケのように皮がむけたり、湿疹ができやすくなり、軽い傷でも潰瘍ができやすくなることがあります。

うっ滞性皮膚炎は、足の血液が戻りにくくなり、静脈に血液がたまる「慢性静脈不全」が原因です。
この状態では、血液の成分が皮膚に沈着し、皮膚の色が黒っぽくなります。

治療では、湿疹を抑えるために薬を使うとともに、血液の流れを良くすることが重要です。
弾性包帯やストッキングを利用して足を圧迫すると効果的です。また、静脈瘤がある場合は手術を検討することもあります。
普段の生活では、足を高くして休むなどの工夫も大切です。

うっ滞性皮膚炎は内科的な血流障害の治療がポイントです。
皮膚科的な生活指導でむくみが収まらない場合やむくみの原因については、内科をご紹介させていただきます。

皮脂欠乏性湿疹

皮脂欠乏性湿疹は、皮膚が乾燥してかゆみや湿疹ができる状態で、加齢や入浴時の洗いすぎによって皮脂や汗の分泌が減少するが原因となります。
これにより、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になります。
特に冬の乾燥した時期に悪化しやすく、高齢者の脚などに多く見られます。
予防には、入浴時に肌を優しく洗い、必要以上にこすらないことが大切です。また、乾燥を防ぐために保湿剤を使うことも効果的です。
湿疹ができた場合は、医師から処方されたステロイド外用薬を使って治療します。
その後はしっかり保湿してりケアすることが大切です。

汗疱,異汗性湿疹

汗疹(あせも)は、大量の発汗によって、汗がつまって皮膚に小さなブツブツができる状態です。

汗疱(かんぽう)も春から夏にかけて汗をかく季節に悪化しよく診られる病気で、汗が関連しますが、金属アレルギーなどの他の原因も関係すると考えられています。
手のひらや足の裏に、汗がつったことをきっけに、小さな水ぶくれが現れます。
水ぶくれが破れ炎症が起こった状態(汗疱状湿疹)になると、かゆみ痛みを伴い異汗性湿疹(いかんせいしっしん)とも呼ばれます。
2~3週間で水ぶくれは治って、薄皮が剥がれるようになってきます。

足裏にできた汗疱は水虫は(白癬)と非常に似ており、皮膚科医でも顕微鏡での検査をしないと区別がつきません。

治療にはステロイド外用剤が用いますが、水虫の場合はステロイドで悪化することもありますので、専門医の受診をお勧めします。

 湿疹・手湿疹・接触性皮膚炎 Q&A

湿疹や手湿疹、接触性皮膚炎について、よくあるご質問をわかりやすくまとめました。
症状でお悩みの方、ご家族が悩んでいる方も、ぜひご参考にしてください。

 

 Q. 湿疹はうつる病気ですか?

A. いいえ。湿疹は感染症ではないため、人にうつることはありません。
ただし、掻きむしった部分に細菌が感染してしまうと、とびひのように広がることがあるため、注意が必要です。

Q. 湿疹とアトピー性皮膚炎はどう違うのですか?

A. 湿疹は皮膚の炎症全般を指す広い意味の言葉で、さまざまな原因や種類があります。
アトピー性皮膚炎はその中でも慢性で再発を繰り返す湿疹の一つで、アレルギー体質や家族歴などが関係しています。

Q. 手湿疹の原因はなんですか?

A. 原因は主に次の4つに分けられます:

  • 洗剤や消毒などの刺激による「刺激性接触皮膚炎」
  • ゴムや金属などによる「アレルギー性接触皮膚炎」
  • 食品成分に触れて起きる「蛋白質接触皮膚炎」
  • アトピー体質のある方に多い「アトピー型手湿疹」
Q. 湿疹や手湿疹はどうやって治療するのですか?

A. 主な治療方法は以下の通りです:

  • ステロイド外用薬や保湿剤などの塗り薬
  • アレルゲンを調べて避ける(パッチテスト)
  • 手袋やハンドクリームなどによるスキンケア
  • 必要に応じて内服薬(かゆみ止め、抗アレルギー薬など)
 Q. 手湿疹は完治しますか?

A. 原因を特定し、それを避けることで完治も可能です。ただし、再発しやすい病気でもあるため、日々のスキンケアや生活習慣の見直しが大切です。

Q. 市販薬で治せますか?

A. 軽い症状なら市販のステロイド外用薬や保湿剤でよくなることもありますが、症状が長引く・悪化する場合は皮膚科の受診をおすすめします。
間違った薬の使い方で悪化するケースもあります。

Q. 子どもにも湿疹や手湿疹はできますか?

A. はい。特にアトピー体質があるお子さんや、手洗いや消毒の多い生活をしている子どもは湿疹になりやすいです。
子どもは皮膚が薄くデリケートなので、早めの対処が大切です。

Q. 冬に湿疹が悪化するのはなぜですか?

A. 冬は空気が乾燥しているため、皮膚のバリア機能が低下しやすくなります。
また、暖房による乾燥や、手洗いの回数が増えることも影響します。保湿をしっかり行うことが予防になります。

Q. 湿疹を防ぐために普段からできることは?

A. 日常生活でできる予防法はこちらです:

  • 手洗い後は必ず保湿をする
  • 洗剤や薬品を扱うときは手袋を使う
  • 刺激の少ない石けんやハンドソープを選ぶ
  • ストレスをためないようにする
Q. 湿疹で皮膚科を受診するときに必要なことは?

A. 湿疹の出るタイミングや使っている化粧品・洗剤などをメモしておくと、診察の助けになります。
また、症状が出た時の写真を撮っておくのも有効です。

 

湿疹や手湿疹は、原因を知って正しくケアすることで改善が期待できます。気になる症状があるときは、早めに皮膚科専門医へ相談しましょう。


参考文献
  • 清水宏. あたらしい皮膚科 第3版. 2018.
  • 手湿疹ガイドライン2017.日皮会誌.2018.
  • 接触皮膚炎診療ガイドライン 2020.日皮会誌.2020.
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME