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乾癬

乾癬とは

乾癬(かんせん)は、赤く盛り上がった皮膚の表面に白い粉のような皮膚片が重なり、フケのようにポロポロと剥がれ落ちる、慢性の炎症性皮膚疾患です。
「かんせん」という病名から感染症と誤解されがちですが、免疫の働きの異常が関係する病気で、周囲の人にうつることはありません
皮膚だけでなく、爪に変化が現れたり、関節に炎症を起こしたりすることもあります。

日本では、全国規模の調査で約0.34%、およそ300人に1人と推定されています(2015年)。幅広い年齢で発症しますが、大人で発症することが多く、男性にやや多い傾向があります。

これまでの塗り薬や紫外線療法に加え、現在はさまざまな飲み薬や生物学的製剤など、治療の選択肢が大きく広がっています。
皮疹の改善だけでなく、かゆみや見た目の悩みを軽減し、普段通りの生活を取り戻すことが治療の目標となります。

当院では、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・日本乾癬学会所属の医師が診察し、塗り薬で難しい場合に、症状の範囲や部位に応じて、ナローバンドUVBやエキシマライトによる紫外線治療も行っています。生物学的製剤については専門医療機関と連携し導入を進めていきます。

乾癬の主な症状

乾癬では免疫の働きが過剰に活発化し、皮膚内部で炎症を引き起こす物質が増加して赤み(紅斑)が生じます。その影響で皮膚の生まれ変わりが通常の10倍以上も速くなり、皮膚が厚くなって銀白色の鱗屑(りんせつ:厚いかさぶた状の皮膚片)となって剥がれ落ちます。

図:乾癬の病態
乾癬の症状の一例、紅斑、鱗屑、浸潤・肥厚

肘、膝、すね、腰まわり、頭皮、髪の生え際など、日常的に摩擦や刺激を受けやすい部位に好発する傾向があります。

尋常性乾癬

ケガや摩擦、引っかき傷などをきっかけに新しい発疹ができる現象はケブネル現象と呼ばれます。そのため、鱗屑を無理にはがしたり硬いタオルで強くこすったりしないことが大切です。

約半数の患者さんにかゆみがみられますが、強いかゆみではないケースも多くあります。ただし、掻き壊すことで症状が悪化する場合や、入浴・飲酒・香辛料の摂取で体が温まることでかゆみが増すことがあります。風邪などの感染症や機械的刺激、ストレスなどは悪化要因となりますが、適度な日光浴(紫外線)は症状の改善に有効です。

見逃しやすい乾癬の初期症状

頭皮のフケが治らないとき

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)の症状

頭皮だけに症状が出ている場合、単なるフケ症や脂漏性皮膚炎と見分けがつきにくいことがあります。生え際を越えて赤みが広がる場合や、厚いフケのような塊が繰り返し付着し市販のシャンプーで改善しない場合は皮膚科へご相談ください。頭皮は毛髪があるため塗り薬が届きにくく、ローション剤など適切な剤形の選択が必要です。

爪のへこみや濁り(爪乾癬)
乾癬の爪症状

ノバルティスHPより

爪に小さな点状のへこみができる、爪が浮き上がる、厚くなる、黄白色に濁るといった症状も乾癬による変化です。爪水虫(爪白癬)と症状が似ているため、真菌検査で鑑別を行います。爪乾癬は改善まで時間を要しますが、外用薬のほか内服薬や注射薬が効果を示す場合があります。

関節の痛みや腫れ(関節症性乾癬)

手足の指の腫れ、朝のこわばり、かかとや腰、背中の痛みがある場合は関節症性乾癬の可能性があります。指全体がソーセージのように腫れる症状などが特徴です。関節炎を放置すると関節の変形や機能障害につながるおそれがあるため、早期の内科的治療が重要です。皮膚症状とともに気になる関節痛がある場合は早めにお知らせください。

乾癬の種類・病型

病型 主な特徴と症状
尋常性乾癬 乾癬の中で最も多いタイプ(全体の約80〜90%)。境界明瞭な紅斑の上に銀白色の鱗屑が付着します。
関節症性乾癬 皮膚症状に加え、手足の関節や脊椎、アキレス腱付着部などに痛みや腫れ、こわばりを伴います。
滴状乾癬 扁桃炎などの感染症を契機に、全身へ小豆大の小さな発疹が多発します。若年層に多く見られます。
乾癬性紅皮症 皮疹が全身の80%以上に広がり、皮膚全体が赤くなって大量の落屑を伴う重症型です。
膿疱性乾癬 発熱とともに全身または局所の皮膚に無菌性の膿疱(膿をもった水ぶくれ)が多発する指定難病です。

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

尋常性とは「一般的・普通」を意味し、乾癬患者さんの大部分を占めます。境界のはっきりした赤い発疹と、その上に重なる銀白色のフケのような鱗屑が特徴です。

関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)

乾癬性関節炎

乾癬患者さんの約15%にみられ、関節リウマチに似た関節の腫れや痛み、朝のこわばりを生じます。手足の指関節だけでなく、首や背骨(脊椎炎)、アキレス腱の付着部(腱付着部炎)などにも炎症が起こります。機械的刺激によるケブネル現象が付着部炎を誘発し、爪の変化を併発することも一般的です。

皮膚と関節の症状が同じ病気によるものと気づかれず放置されるケースがありますが、進行すると関節破壊が進み元に戻らなくなるため、早期発見と早期治療が極めて重要です。治療には生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬など)や飲み薬(JAK阻害薬、PDE4阻害薬など)が用いられます。

滴状乾癬(てきじょうかんせん)

滴状乾癬

乾癬全体の約4%を占め、小児や若い世代に多く発症します。溶連菌による扁桃腺炎などの感染症をきっかけに、水滴のような小豆大の小さな発疹が全身に急激に出現します。感染症の治癒とともに軽快することが多いですが、尋常性乾癬へと移行する場合もあります。

乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

乾癬性紅皮症

全体の約1%程度にみられる重症型です。紅斑が全身に広がり、皮膚全体から大量の皮膚片が剥がれ落ちます。発熱、悪寒、倦怠感などを伴い、体温調節機能やバリア機能が破綻するため入院管理が必要になることがあります。不適切な治療中断などが引き金となることがあります。

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

膿疱性乾癬

皮膚に無菌性の膿(うみ)がたまった膿疱が多発するタイプです(菌は存在しないため感染はしません)。手のひらや足の裏などに限局するものと、急な高熱とともに全身に広がる「汎発性膿疱性乾癬」があります。汎発性は厚生労働省の指定難病となっており、すみやかに入院しての治療と全身管理が必要です。

乾癬の原因・病態

乾癬になりやすい遺伝的素因を背景に、摩擦や外傷(ケブネル現象)、感染症、薬剤、精神的ストレスなどの環境要因が加わることで発症します。遺伝的要因のみで発症するわけではなく、血縁者に患者さんがいる場合の発症率は約5%程度です。

図:乾癬の原因

マルホHPより

体内でサイトカイン(TNF-αやIL-17、IL-23など)と呼ばれる炎症性物質が過剰に作られることで、皮膚の慢性的な炎症が持続します。

乾癬と合併症

乾癬患者さんは肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのメタボリックシンドロームの合併率が高いことが明らかになっています。
脂肪組織から産生される炎症物質が皮膚症状を悪化させ、皮膚の慢性炎症が血管や代謝系に悪影響を与える相互関係があるため、生活習慣の改善も治療の重要な要素です。

グラフ:併存疾患の罹患率

マルホHPより

 

乾癬で皮膚科を受診する目安

  • 赤い発疹と白い粉のようなかさぶたが同じ部位に繰り返しできる
  • 頭皮のフケや生え際の赤みが市販薬やシャンプーで改善しない
  • 爪に点状のくぼみや濁り、厚みの変化がある
  • 皮疹とともに手指の関節痛、朝のこわばり、アキレス腱の痛みがある
  • 顔、手足、陰部など生活や仕事に支障が出る部位に発疹がある

乾癬の重症度は皮膚の面積だけでなく生活への影響度も含めて総合的に判断します。気になる症状がある場合は自己判断せず受診をご検討ください。


乾癬の治療法

乾癬治療は、外用療法(塗り薬)を基本とし、重症度や部位、関節症状の有無に応じて光線療法、内服療法、生物学的製剤を組み合わせて段階的に進めます。

図:乾癬の治療法の分類

乾癬の治療ピラミッド(マルホHPより)

図:各治療の作用ポイント

マルホHPより

外用療法(塗り薬)

乾癬治療の第一選択となる基本治療です。主にステロイド外用薬活性型ビタミンD3外用薬、およびその両方を合わせた配合外用薬が使われます。

薬の主な作用

外用薬の作用 マルホHPより

 

薬剤の種類 主な作用と特徴
ステロイド外用薬 皮膚の過剰な炎症を素早く抑えます。即効性がありますが長期連用時の副作用管理が必要です。
活性型ビタミンD3外用薬 表皮細胞の異常な増殖を抑え、正常な分化を促します。再発予防の維持療法にも適しています。
配合外用薬 ステロイドとビタミンD3を一体化させた薬剤で、1日1回の塗布で高い効果と利便性を両立します。

タピナロフ
(ブイタマークリーム®)

ステロイドを含まない新しい塗り薬です。細胞内のAh受容体を活性化して、炎症物質の抑制と皮膚バリア機能の改善をもたらします。尋常性乾癬に対して1日1回塗布し、長期的な皮疹再燃の抑制効果があります。

光線療法(紫外線療法)

外用薬で改善が乏しい場合や広範囲に皮疹がある場合に行われます。紫外線が持つ免疫抑制作用を利用して皮膚の炎症を鎮めます。

治療法 特徴と適応
ナローバンドUVB療法 治療効果の高い非常に狭い中波長紫外線(311nm付近)を全身または広範囲に照射します。
エキシマライト療法 高出力の紫外線を部分的に照射する機器で、治りにくい局所的な皮疹に対してピンポイントで治療します。
PUVA療法 光感受性を高める薬剤(ソラレン)内服後に長波長紫外線を照射する方法で、現在はUVBが主流です。

内服療法(飲み薬)

皮疹が全身に及ぶ場合や外用・光線療法で十分なコントロールが得られない中等症〜重症の患者さんに用いられます。

薬剤分類(一般名) 特徴と主な注意点
PDE4阻害薬
アプレミラスト(オテズラ®)
細胞内の酵素を阻害し炎症性サイトカインの産生を抑制します。定期的な血液検査の負担が比較的少なく、軽度の関節症状にも効果があります。主な副作用は下痢や頭痛です。
TYK2阻害薬
デュークラバシチニブ(ソーティクツ®)
IL-23やIL-12などのシグナル伝達を担うTYK2を選択的に阻害する1日1回服用の経口薬です。感染症等の定期検査を行いながら使用します。
免疫抑制薬
シクロスポリン(ネオーラル®)
メトトレキサート
過剰な免疫反応を強く抑えます。血圧上昇や腎機能障害、間質性肺炎などの副作用に注意し、定期的な血液検査・画像検査を実施します。
ビタミンA誘導体
エトレチナート(チガソン®)
表皮の角化異常を整えます。胎児への影響があるため、服薬中および休薬後一定期間の厳格な避妊が必要です。

生物学的製剤(注射薬)

従来の治療で効果が不十分な難治性の皮疹や関節症性乾癬に対して劇的な改善効果をもたらす先進的な注射薬です。乾癬の発症に関わる特定のサイトカインをピンポイントでブロックします。

標的サイトカイン 代表的な薬剤名 主な特徴
TNF-α阻害薬

インフリキシマブ(レミケード®)
アダリムマブ(ヒュミラ®)
セルトリズマブ ペゴル(シムジア®)

皮膚および関節症状に対して豊富な使用実績があります。
レミケードだけは点滴での注射薬ですが維持期は8週間隔での投与になります。他は2~4週間隔の皮下注薬で自己注射可能です。
ジムジアは妊婦・授乳婦への安全性が比較的高い薬です。
IL-17阻害薬

セクキヌマ(コセンティクス®)
イキセキズマブ(トルツ®)
ブロダルマブ(ルミセフ®)
ビメキズマブ(ビンゼレックス®)

皮膚病変の消失効果が早く、関節症状や爪症状にも高い有効性を示します。
投与間隔は2週~4週間隔で、すべて皮下注射薬で自己注射可能です。
コセンティクスは小児(6歳以上)に投与可能です。
IL-23阻害薬

グセルクマブ(トレムフィア®)
リサンキズマブ(スキリージ®)
チルドラキズマブ(イルミア®)

長期的な皮疹改善の維持に優れ、維持期の投与間隔が長く(8〜12週に1回など)、通院負担を軽減できます。
(維持期の投与間隔が12週間に1回のイルミアは、医療機関での投与が必要です。自己注射が難しい方で選択枝になります)。
IL-12/23阻害薬 ウステキヌマブ(ステラーラ®) 投与実績が長く、投与間隔も12週間に1回と通院負担を軽減できますが、医療機関での投与が必要です。

導入前には結核やB型肝炎などの感染症スクリーニング検査などが必要で、当院では内科や専門施設に導入をお願いしております。
高額な治療ですが保険適用です。自己負担額は薬剤・投与間隔により異なり、医療費助成制度(高額療養費制度など)を活用できる場合があります。

生物学的製剤や新規治療薬の選び方

薬剤を選択する際は、患者さんの生活状況や希望に合わせて効果・安全性・通院頻度・費用のバランスを総合的に検討します。

  • 症状のタイプ:皮疹の範囲、爪病変、関節炎の有無
  • 通院スタイル:医療機関での点滴か、自宅での自己注射(皮下注)か、毎日の内服か
  • ライフステージ:挙児希望(妊娠・授乳)の有無、ご高齢や持病の有無

ひとつの薬剤で効果が不十分な場合でも、別の作用機序を持つ薬剤に変更することで寛解を目指すことが可能です。当院では適切な適応判断を行い、高度な治療が必要な場合は連携する専門医療機関を迅速にご紹介いたします。

乾癬についてのよくある質問

Q1. 乾癬は他の人にうつる病気ですか?

A1. いいえ、乾癬はウイルスや細菌による感染症ではないため、家族や周囲の人にうつることはありません。お風呂やプール、タオルの共有なども全く問題ありません。

Q2. 症状がよくなったら塗り薬をやめてもよいですか?

A2. 自己判断で急に外用を中止すると、再燃するリスクが高まります。症状が落ち着いた後も外用頻度を段階的に減らす維持療法を行うことがありますので、医師の指示に従ってください。

Q3. 食生活や日常生活で気をつけることはありますか?

A3. 暴飲暴食や高脂肪食、過度な飲酒は肥満やメタボリックシンドロームを悪化させ、乾癬の増悪因子となります。バランスの良い食事、禁煙、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。

院長より

乾癬は皮疹の見た目やかゆみ、慢性的な経過によって、日常生活やお仕事の中で大きなストレスを感じやすい病気です。しかし、近年は外用薬や光線療法をはじめ、内服薬や注射薬など治療の選択肢が非常に豊富になり、症状を抑えて普段通りの生活を送ることが目指せるようになっています。

れいこ皮膚科クリニックでは、豊富な臨床経験を持つ女性皮膚科専門医が、患者さんのお悩みやライフスタイルに合わせて適切な治療プランをご提案いたします。小さなお子様の皮膚トラブルから大人の難治性皮膚疾患まで幅広く対応しておりますので、「フケがなかなか治らない」「肘や膝の赤みが引かない」など、気になる症状がございましたらお気軽に阪急六甲・JR六甲道近くの当院へご相談ください。

当院の診療方針や初診の手続きについては「初診の方へ」のページ「一般皮膚科」のページもご覧いただけます。

「この程度で相談してよいのか」と迷わず、症状や生活への困りごとを皮膚科でお聞かせください。


参考文献
  • 清水宏. あたらしい皮膚科 第3版. 2018.
  • 日本皮膚科学会乾癬分子標的薬安全性検討委員会、佐伯秀久、馬渕智生、朝比奈昭彦ほか.乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版).日本皮膚科学会雑誌.2022.
  • 日本皮膚科学会乾癬分子標的薬安全性検討委員会、佐伯秀久、馬渕智生、朝比奈昭彦ほか.乾癬におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬(JAK1阻害薬とTYK2阻害薬)の使用ガイダンス.日本皮膚科学会雑誌.2023.
  • Kubota K, et al. BMJ Open. 2015.
  • Armstrong AW, et al. Pathophysiology, Clinical Presentation, and Treatment of Psoriasis: A Review. JAMA. 2020
  • Sbidian E, et al. Systemic pharmacological treatments for chronic plaque psoriasis: a network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2023.

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